2012年7月15日      聖霊降臨後第7主日(B年)

 

司祭 バルトロマイ 三浦恒久

杖と履物と一枚の下着【マルコによる福音書6:7〜13】

そして、十二人を呼び寄せ、二人ずつ組にして遣わすことにされた。その際、汚れた霊にたいする権能を授け、旅には杖一本のほか何も持たず、パンも、袋も、また帯の中に金も持たず、ただ履物は履くように、そして「下着は二枚着てはならない」と命じられた。(マルコによる福音書6:7〜9)

 超教派の教役者の集まりで、ある教派の牧師が語った言葉が心に残っています。
 『わたしが数年前に赴任した現在の教会は、信徒がわずか3名でした。本部からの援助も少なく、アルバイトをしながらの伝道活動でした。伝道の成果も上がらず、悩んでいたとき、あるアルコール依存症の方との出会いが、わたしに一条の光を与えてくれました。わたしはこの方と、トコトン付き合っていこうと覚悟を決めました。それがイエスが歩まれた道だと信じて・・・。
 それから5年、信徒が30名になりました。信徒の内3分の1がアルコール依存症の方々、3分の1が強迫神経症の方々です。現在3名の方と教会で寝食を共にしています。悩みや心配事は尽きませんが、これが教会のミッションだと信じて歩んでいます。』

 わたしは淡々とこのように語る牧師の言葉に、強烈なショックを受けました。教会の原点、牧師の原点に連れ戻されたような気持ちでした。

 「十二人は出かけて行って、悔い改めさせるために宣教した。そして、多くの悪霊を追い出し、油を塗って多くの病人をいやした。」(マルコ6:12、13)
 イエスは十二人を呼び寄せ、彼らに宣教と悪霊追放という大きな権限と責任を与えられました。
 そしてイエスは、十二弟子を宣教に派遣するに際して、杖と履物と一枚の下着という旅に必要な最小限の備えの指示をされました。弟子たちはきわめて軽い身支度で旅を続け、町々、村々で迎えてくれる人々の好意に頼らなければなりませんでした。
 この十二弟子の宣教への派遣の記録の中に、教会(弟子たち)の原点が語られています。人々の苦しみや痛みに寄り添い、自らも最低限の生活に甘んじ、神の国を宣べ伝えた弟子たちの姿に、教会の原点が映し出されています。

 冒頭でご紹介した牧師の言葉が、さらに続きます。
 『教会の信徒の減少、経済力の低下で教会の存続が危ぶまれる今日、一度原点に立ち返ってみてはどうでしょうか。教会のミッションとは何かを、ゼロベースで考えてみてはどうでしょうか。』

 杖と履物と一枚の下着だけで宣教に派遣された弟子たち。人々の好意に頼らざるを得なかった弟子たち。そして、人々の苦しみや痛みに寄り添い続けた弟子たち。
 この教会の原点をわたしたちは見失っていないでしょうか。