2013年3月17日      大斎節第5主日(C年)

 

執事 アントニオ 出口 崇

     さくら咲き つつじも咲いて 夜の森は 花の季節よ
     さわやかに 風さえ薫り 山青く せきれい歌う
     ああ 富岡に わがまちに 朝の陽が 大きく昇る

京阪神3教区が活動している小名浜聖テモテボランティアセンターが関わりを持っている仮設住宅に住む富岡町の方々の町歌「富岡わがまち」という歌があります。

半年ほど前、「ようやく最近になって、この歌を涙なしで最後まで歌えるようになった」
と、仮設住宅で生活されているあるご婦人が歌ってくださいました。
今は住むことが出来ない、すばらしいふるさとを思った、素敵な歌です。
3番まである歌で、富岡町の方々はみんな歌えるそうです。

その歌の2番にこのような歌詞があります。
「新しい 科学の技術(わざ)に ふるさとの 未来をひらく」

あれから2年が経ちました。
この2年間で私が出会った方々の生活は、「良くなった」とはとても言えません。
新しい 科学の技術(わざ) によって失ったものの大きさを日に日に感じておられます。
そしてそれは、富岡の方々だけではなく、私たち、この時代に生きるすべての人びとが感じているのではないでしょうか。

「ある人がぶどう園を作り、これを農夫たちに貸して長い旅に出た」(ルカ20:9)
神から託されたぶどう畑を、我が物顔で扱い、再三の催促にも関わらず、主権を奪おうとした。
私たちの時代で言えば「とうとう収穫どころか、住むこともままならないようにしてしまった」この時代に生きる私たちすべての責任であります。

しかしそれでもなお、主人は私たちに大切な一人息子を遣わせてくださいました。
私たちが、過ちをもう繰り返さないため、神様に立ち返るために。
苦しみの中にある人びとと共に、生きるために。

富岡の皆さんがいつか笑顔でこの歌を歌えるときが来ることを切に願います。