2014年10月5日      聖霊降臨後第17主日(A年)

 

司祭 クレメント 大岡 創

「この世はみな神の世界」【マタイ21:33〜43】

 「ぶどう園と農夫の譬え」には今までのユダヤ人達が頑なさゆえに神の言葉を受け入れてこなかった歴史とイエスさまの受難を暗示する内容が語られています。
 ある家の主人が旅に出かけました。ぶどう園を農夫たちに貸して、その管理を信頼して委ねたのです。この農夫たちは当時のユダヤ人、ことに譬え話が語られた相手であるユダヤ教の指導者たちです。この人々に委ねられたイスラエルの信仰の歴史はぶどう園のその後の農夫たちの行動に描かれています。そして今、実際に語っているイエス自身をも抹殺してしまうことにも言及し、神の裁きが下されることによって、新しい民にぶどう園は受け継がれていくことを示唆しています。
 この譬えは現代に生きる私たちにも語りかけられています。ぶどう園の農夫たちはぶどう園が神の所有物であることを忘れ、いつしか自分たちの所有物にしようとしました。神に代わって人間が神の国を支配しようとしたところから争いが生まれ、ついには神の存在すら抹殺してしまうことの恐ろしさを伝えようとしています。私たちが生きている世界は神さまから託されたもの、人間がこの世界を神さまから信託されていることを忘れてしまったところから悲劇は生じてくることを教えてくれています。
 しかし、どんなことがあっても人間を救おうとする神さまの心が伝えられているのです。何度も信頼を裏切られても僕を送り続ける主人の姿にあらわされています。神さまはすべての人のうちに福音の種をまいておられます。それを心を込めて育て養うことが何よりも求められているのではないでしょうか。私たちに与えられ委ねられている神さまからの恵みを謙虚に思い起こしてみたいものです。