2019年7月7日     聖霊降臨後第4主日(C年)

 

司祭 ヨハネ 井田 泉

この家に平和があるように【ルカ10:1‐12、16−20】

 ルカ福音書9章で、イエスは12人を派遣されましたが、今日の10章ではその6倍の72人を宣教に派遣されました。
 「神の国はあなたがたに近づいた。」10:9
 このメッセージを広げてほしいのです。神の国を広げたい。神の国を知らなければ、わたしたちは地の国、人の国しか知りません。損か得か、有利か不利か、上か下か、力で人を支配する、脅して人を黙らせる──こういう世界ではない、愛と正義と平和の世界、神の愛と正義のもとで人と人がお互いを生かし合う世界。これこそが広がらなくてはなりません。

 72人はとても不安だったのではないでしょうか。イエスが一緒に行ってくださるのではなく、自分たちだけで宣教に出かけなければならなのです。
 けれどもこう書いてあります。
 「10:1 その後、主はほかに七十二人を任命し、御自分が行くつもりのすべての町や村に二人ずつ先に遣わされた。」
 まず、主イエスがこの72人を任命されたのだ、ということです。選んだ規準は自分たちにはありません。イエスが「よし」と見て、判断して選ばれたのです。「任命」するというとき、単に選んで指名されたのではなく、イエスはこの72人に権威を、言い変えれば力を与えられました。自分の力ではできない。しかしイエスから与えられた力によって、彼らは神さまの業を行うことができるようにされたのです。

 さらにこう書かれています。
 「御自分が行くつもりのすべての町や村に先に遣わされた。」
 72人が先に遣わされて行くけれども、彼らが行くどの町にもどの村にも、やがて後からイエスご自身が行かれるのです。だから先に行く弟子たちの働きは不十分でもよい、失敗してもよい。後から来られるイエスが責任を持って補ってくださる、あるいは立て直してくださるのです。だから、恐れずひるまず、傲慢にならず、しかし卑下したりせず、託されたことをしっかりやりなさい。

 三つ目に書かれています。
 「二人ずつ」遣わされた。人は一人では弱い。判断も間違いやすい。だからふたりずつ組にして、助け合いながら働いていくのです。
 この1節に、イエスが72人を派遣されるための配慮が三つも書かれている、ということに驚きます。

 「10:5 どこかの家に入ったら、まず、『この家に平和があるように』と言いなさい。」
 この家に平和があるように。そこに神が臨在してくださり、そこに神の国が現れるように祈りなさい。
 人は平和を必要としています。しかし偽りの平和が横行している。イエスはこのことをご存じであって、神の国の平和を弟子たちにもたらすようにと託されたのでした。

 やがて72人の弟子たちが帰ってきて、イエスに報告します。
 「『主よ、お名前を使うと、悪霊さえもわたしたちに屈服します。』イエスは言われた。『わたしは、サタンが稲妻のように天から落ちるのを見ていた。』」10:17−18
 72人をとおして、イエスが働いておられました。

 イエスの思いを受け、イエスと共に歩もうと願う人は、実はあの72人なのです。
 「神の国はあなたがたに近づいた」ルカ10:9
 このメッセージを自分に刻んで生き、周りにもそれを広めていきましょう。
 わたしたちも行くところごとに、「この家に平和があるように」「ここに主の平和があるように」と祈って、イエスの願いを広げていきましょう。