2020年2月23日     大斎節前主日(A年)

 

司祭 セオドラ 池本則子

今、イエス様がモーセとエリヤに語ること

 今週の水曜日から大斎節が始まります。イエス様の受難と十字架の死を黙想しつつ自分の日々の生活や生き方を振り返る大斎節。その大斎節に入る前の日曜日には毎年、イエス様の姿が変わる「イエス変容」という出来事が読まれます。

 イエス様はご自分の受難予告をされた6日後、弟子たちの中からペトロ・ヤコブ・ヨハネだけを連れて高い山に登られました。すると、イエス様の姿が突然変わり、顔は太陽のように輝き、服は光のように白くなったのです。そこにモーセとエリヤが現れました。モーセは神様から律法を授かった人、エリヤは異教のバアルと戦った預言者、旧約聖書を代表する2人です。イエス様はこの2人と語り合います。時代を超えたこの出会い、そして光り輝くイエス様の姿は3人の弟子たちの目にどのように映ったでしょうか。
 ペトロはこの状態をいつまでも保っておきたく思ったのでしょうか、仮小屋を建てることを提案します。しかし、光り輝く雲が3人を覆い、「これはわたしの愛する子、わたしの心に敵う者。これに聞け」という神様の声が聞こえた後、モーセとエリヤの姿は見えなくなりました。
 イエス様はこの後、光り輝く姿とはまったく正反対の苦難と十字架の道へと進んでいきますが、変容の姿は十字架によって救いが完成する栄光の喜びの姿だったのではないでしょうか。

 ところで、今、もしイエス様がモーセとエリヤと語り合うとしたらどのようなことを語り合うだろうかと考えてみました。きっと今の世界の状況について語り合うのではないかと思います。すべての人の命を大切に思い、世界が平和になることを願っておられるイエス様は、紛争やテロなどによって殺し合いが絶えず、生きるのに困難を覚える人たちが無くならない状況にどれだけ胸を痛めているでしょうか。それだけではなく、今、世界は新型コロナウイルスに不安を抱き、また、原発問題や自然災害など悩みはつきません。イエス様はこのような世界の現状についてモーセとエリヤに語り掛け、平和で安全な世界が訪れるようにと話し合ってくださるのではないでしょうか。

 イエス様は十字架で苦しみを受けられた後、復活され、私たちに喜びと希望を与えてくださいました。イエス様変容の姿というのは明るい希望をもたらす栄光の姿でした。

 困難な今の世界にあっても私たちにはイエス様が与えてくださった希望と喜びがあります。また、私たち一人ひとりの人生においても喜びばかりではなく、苦労の絶えない時もありますけれども、それでも、 イエス様は私たちに生きる喜びと希望を与えてくださっています。

 イエス様の光り輝く姿を仰ぎ見るとき、私たちも希望と喜びに満ちた栄光の姿へと変えられていきます。
 『どうか、わたしたちが、信仰によってみ顔の光をあおぎ見、自分の十字架を負う力を強められ、栄光から栄光へと、主と同じ姿に変えられますように』。大斎節前主日の特祷はイエス様と共に生きる喜びを与えてくださっているのではないでしょうか。