バルナバ栄一の「聖書談話」(マルコによる福音書 6 ) (1)鳩

皆で話し合う「マルコによる福音書(6)」


マルコによる福音書1章35節〜2章12節

 

巡回して宣教する(ルカ4:42〜44)
 35 朝早くまだ暗いうちに、イエスは起きて、人里離れた所に出て行き、そこで祈っておられた。36 シモンとその仲間はイエスの後を追い、37 見つけると、「みんなが探しています」と言った。38 イエスは言われた。「近くのほかの町や村へ行こう。そこでも、わたしは説教する。そのためにわたしは出てきたのである。」39そして、ガリラヤ中の会堂に行き、宣教し、悪霊を追い出された。
      (内容は、前回の報告に記載済み。 )

らい病を患っている人をいやす(マタイ8:1〜4 ルカ5:12〜16)

 40 さて、らい病を患っている人が、イエスのところに来てひざまずいて願い、「御心ならば、私を清くすることがおできになります」と言った。41 イエスが深く憐れんで、手を差し伸べてその人に触れ、「よろしい。清くなれ」と言われると、42 たちまちらい病は去り、その人は清くなった。43 イエスはすぐにその人を立ち去らせようとし、厳しく注意して、44 言われた。「誰にも、何も話さないように気をつけなさい。ただ、行って祭司に体を見せ、モーセが定めたものを清めのために献げて、人々に証明しなさい。45 しかし、彼はそこを立ち去ると、大いにこの出来事を人々に告げ、言い広め始めた。それで、イエスはもはや公然と町に入る事が出来ず、町の外の人のいないところにおられた。それでも、人々は四方からイエスのところに集まって来た。

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 先ず、現在のハンセン病(正式の学会の病名では現在も、らい病=レプラですが)と、当時のらい病との違いを述べましょう。ハンセン病はらい菌の感染によって起こる伝染病ですが、当時の「らい」と言われた皮膚病は,近頃は「重い皮膚病」と記載されているように、ハンセン病以外のものも含まれておりました。唯ハンセン病もらいと称せられた皮膚病も、人間社会の差別の対象となった事は同じです。殊にイエス様当時の「らい」患者は、社会から締め出され、人々の憐れみにすがって最低の生活を続けるほかはなかったのです。道を行く時も「自分は汚れている。汚れている。どうぞ近寄らないで下さい」と呼ばわりながら歩かねばなりませんでした。イエス様でも他の病人は「いやす」と言う言葉を用いられたのに、らい患者は「清める」と言う言葉を用いられました。ハンセン病から治癒している元患者の方々にも、まだ差別は完全に取り去られていないと言う実情はあるのですが、イエス当時はとてもひどく、映画「ベンハー」でも見られた所ですが、我々と同じ人間と見られない社会に、この人たちを人間として迎え入れて下さった方・イエスが来られた、と言う事が大切です。
  聖書でイエスが10人のらい病人と出会われる所が、もう1箇所があります。「ルカによる福音書」17章ですが、彼ら10人ははるか離れた所に立ち、大声をあげてイエス様の注意をひこうとしました。汚れた者はイエスの前まで来れなかったのです。「時は満ち、神の国は到来した」と宣言されているのに、救い主の前まで進み出る事は出来なかったのです。救い主の前からさえ自分を隔てなければならなかったところに、彼らの悲惨の極があったのです。私たちは礼拝で、神様の前に、救い主イエスのまん前に出て行くことができると言う幸いを持ちます。そしてこの独りのらい病人もイエスの許まで来ました。マタイ8章にも同じ話が載っていますが、当時律法では普通の人の前にらいの人は出られなかったのですから、マタイの作為で、そこには、山から下りてこられたイエスとらい病人が出会いがしらにぶっつかったように書いてあるのかも知れません。勿論そのように全く思いがけなく出会いが起こったとも考えられますが、しかし、このらい病人の信仰が、離れた所から声をかけることに辛抱できなかったから、イエスの許に出てきた、と考えても良いと思われます。どちらにしても、イエスが彼を受け入れ、引き入れ、隔てを置く事を許されなかった、と言う事が根本にあるのではないでしょうか。神の子イエス・キリストと私たちの間には、らい病人でなくとも当然大きな隔たりがあります。私たちは「主よ、我を去りたまえ。我は罪多き者ですから」(ルカ5:8)と告白しないでは居れない者ですから隔たりがあっても仕方がないのです。私も、乳児を治療していて万策尽き、その臨終に祈って奇跡的な回復を見た時、「主よ、離れてください」と祈った事があります。キリストの栄光と聖なる力が現れる時、み許に近づき過ぎたと感じてペテロのように畏れたのです。

 

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