原発事故による親子のストレス・改善傾向止まる ―福島大研究所今年の調査より―

(2015年10月1日福島民報新聞・朝日新聞掲載記事より)

東京電力福島第一原発事故による福島県内の子どもと保護者のストレスで、昨年まで続いていた改善傾向が今年は止まったことが分かりました。福島大の災害心理研究所が30日に発表しました。

同研究所の筒井雄二所長(共生システム理工学類教授)はストレスの減少傾向が横ばいになった理由を「除染しても放射線量は事故前よりは高いまま。いまだに放射能を意識せざるを得ない日常の不安があるため、ストレスが弱まりにくくなっている。このままの高い状態で推移する可能性がある」と分析しています。

又調査の結果から、避難地域から県内外に避難している母親と子どものストレスは、避難していない県内各地の母子と比べると高くなっています。筒井氏は「避難した人は仕事や住居、学校など生活環境のさまざまな変化が、ストレスになっているのではないか」と分析しました。

さらに宮城県南部でも、福島市の親とストレス度合はほぼ同程度でした。原発事故直後から同地域の空間線量などを調べている東北大学ラジオアイソトープ研究教育センターの吉田浩子講師は「線量は福島県北部の相馬市や伊達市と変わらない。原発事故による心理的影響は福島県だけの問題ではない」と話しています。

私は福島県郡山市で暮らしていますが、震災から4年が経過した今でも、日々の生活の中で放射能への不安を消す事は出来ません。日常の会話の中で、放射能を気にしていないとは大きな声で言えますが、気にしていると言う事は慎まなくてはいけません。この場所ではそれぞれが出来る範囲で放射能と折り合いを付けながら生活しているので、話題にあげてしまうと衝突し人間関係を壊しかねないからです。実際には不安はありながらも、どこかで割り切り受け入れなくては生活出来ないので、年々話題にものぼらなくなりつつあります。

とりわけ、子を持つ母親のストレスはとても深いものがあります。

ある郡山市に住む一児のお母さんは、今でも洗濯物を外に干さず、帰宅後は放射能を出来るだけ落とすために親子共に着替えと手洗いうがいを欠かさないそうです。風の強い日は窓を開けず、野菜も福島県産は避け、子どもに外遊びをさせるのも控えています。

女性や子どもなど社会的に弱い立場にいる人ほど、放射能のリスクを背負わされており、声に出さず耐えています。今、政府は豊かさを求め原発回帰を進めていますが、母と子が笑顔でいられる世界こそ、目指すべき「幸せ」なのではないかと思います。