自主避難者3割超が来春後の住居「未定」

(2016年7月30日朝日新聞・2016年8月2日福島民報新聞・8月3日朝日新聞掲載記事より)2016年8月3日朝日

東京電力福島第一原発事故で出されていた「避難指示」が相次いで解除されています。政府は2017年3月末までに、放射線量の高い「帰還困難区域」以外を解除する方針です。2020年の東京五輪を「復興五輪」と位置づけ、世界に復興をアピールしようというねらいもあります。これまでの避難解除に伴い、約2万人が事故前に暮らしていた土地に戻れるようになりました。しかし、実際に戻ったのはわずか5%ほどです。避難生活が長引いた事で、避難先で仕事を得たり、学校に通うようになったり、そこでの生活になじんだ人が多いのです。5年間は“避難”というには長過ぎるという事でしょう。また、放射線への不安のほか、商店や病院の再開もわずかなため、若い人ほど戻る事が難しい環境です。

一方で、東電や政府は賠償や生活支援を打ち切り始めています。
政府からの避難指示を受けずに避難した自主避難者について、福島県などの自治体は「災害救助法」に基づき、県内外の民間アパートを借り上げ、無償で提供しています。福島県ではその住宅供与を、2017年3月をもって終了する事としており、自主避難者は地元に帰還するか、自費で自主避難を続けるか決断を迫られています。

2016年8月2日福島民報東日本大震災と原発事故に伴い福島県外に避難している福島県民(自主避難者を含む)は2016年7月14日現在で、4万982人います。ちなみに福島県内に避難しているのは2016年8月1日現在、4万7922人。避難先不明者は20人で、県内外合わせた避難者数は8万8924人にのぼります。
2016年7月30日朝日

福島県内外の自主避難者に対して、福島県などが戸別訪問したところ、面会できた5190世帯のうち、2017年4月以降の住居が「未定」と答えたのは1693世帯(32.6%)に上ることが分かりました。

自主避難者の中には放射線被ばくから身を守るために着の身着のままで避難してきた母子だけの世帯も多く、住宅支援の打ち切りは深刻な問題です。多くの自主避難者は二重生活の過酷さのみならず、心ない差別や偏見にもさらされています。


 

福島で子育てに関わる人たちは、今も様々な不安や葛藤を抱えています。年月の経過と共に、福島で暮らす人々が放射能について話題にする事はますます少なくなってきました。それは、福島で生きていく事を選んだからには、消えることのない放射能の問題は受け入れざるを得ない事だからです。しかし放射線量は場所によっては今だ高いままであり、放射能の問題はよりタブーとなっていると言えます。
放射能を全く気にしていない人もいれば、自分に出来る範囲で被ばく対策をしている人もおり、各々が放射能に対し自分なりの基準を定めて生活しています。

もう心配いらないという報道、危険だという見解、どちらも溢れています。今、福島へ戻るか迷っている福島県外へ自主避難されている方には、徹底的に情報を収集し、出来る事なら自分の目や足を使い現地を訪れ、福島へ戻るリスクとメリットを明確に把握し悔いのない選択をされる事を願っています。

そしてあらたな生活を始める自主避難者に対し、政府や自治体は様々な方向から支援していかなくてはならないと思います。