今、原発避難者が本当に求めている支援とは ー損害賠償に潜む問題ー

(2015年7月30日中日新聞掲載記事より)

届け 原発被災者の叫び
届け 原発被災者の叫び

政府や東京電力は「復興」の名のもと、福島第一原発事故に伴う避難者らに対する被害賠償や住宅支援などの打ち切りを急いでいます。福島県富岡町出身者らでつくるグループは「原発被害者生活支援法」の制定を目指し、国会議員らに訴えるため、被害者の「生の声」を集めてきました。アンケートを集約した小冊子には、『こんな理不尽な扱いには耐えられない』など、好転の兆しが見えない状況に対する避難者の憤りがあふれています。

アンケートで「最もつらかったことは何か?」という質問では、「生活不安」60%、「見通しが暗い」56%、「狭い住居」55%、「家族離散」40%、「失業」33%と続いています。
現在避難指示の対象者には、一律で月額10万円の精神的損害賠償があります。アンケートではこれに対して「生活費として足りない」が87%と多数を占めています。放射線のへの恐怖から一家離散となるケースも回答者の59%を占め、離散による家計への負担も看過出来ません。
富岡町は現在、帰還困難区域と居住制限区域、避難指示解除準備区域が混在しています。自宅が富岡町内にある女性(75歳)は『自宅は準備区域にあるが、近く解体せざるをえない状態だ。しかし国は帰還困難区域のみ手厚い賠償を行い、そのほかの区域への賠償を軽んじている』と訴えています。
被害賠償では「給付」に力点が置かれていますが、被災者間で格差が生まれ人間関係に亀裂が入る状態が起こるなど、その「形態」に問題が潜んでいます。
このアンケートを実施した会の代表者は、『精神的損害賠償打ち切り後、数年にわたり、就職先の無料あっせんや標準的な収入が得られない場合差額分を国が賄うといった「自立支援」が必要である』と訴えています。

私は郡山市在住ですが、しばしば周囲の人との間で、避難者への賠償金について話題にのぼることがあります。たいがいは、賠償金を手にすることで人間関係が壊れたり、勤労意欲が損なわれ破綻している、といった内容です。福島で暮らす賠償金を支払われていない立場にいる人たちが、賠償金が本当の自立支援になっているのか疑問を抱いているのを実感しています。

原発事故後から時間の経過とともに、求められている支援の内容は刻々と変化しています。
本当の「復興」のためには、政府は避難者の置かれている状況や必要としている支援にもっと目を向ける必要があり、そして被災者自身も主張を伝えていく努力が必要なのだと思います。

広島・長崎の被曝から70年、伝えていくということ

(2015年8月4日朝日新聞掲載記事より)

反核の闘い 福島とともに ーおびえる少女は「昔の自分」ー
反核の闘い 福島とともに
ーおびえる少女は「昔の自分」ー

8月6日は、70年前に広島に原子爆弾が投下された日です。
被爆者の平均年齢は80歳となり高齢化が進み、語り部も少なくなってきています。広島市は昨年から、被爆直後の市内を撮影した映像や写真をみて、当時の模様を次代に語る「体験伝承者」の育成を始めており、被爆2世ら100人を超える人が参加しました。
風化させないために努力が必要なのは、福島も同じです。福島で暮らしていると、震災から今年で4年という短い歳月ですが、すでに風化してきているのを実感しています。

広島、長崎の悲惨な体験を語ることができる被爆者が減っていく中、朝日新聞では約2万2千人の被爆者を対象にアンケートの冊子を送り、5762人から有効回答を得ました。その回答者の7割近い人が「原発に反対」と回答しています。又、福島の原発事故の被災者に対する必要な支援として8割を超える人が「定期的な健康診断」を挙げています。
この結果から、同じ傷を受けた人だからこそ痛みをわかちあい、理解しあえるのだと思いました。

3歳の時に広島で被曝した千葉孝子(73)さんは、結婚や妊娠で差別を受け傷つき苦しんだと言います。福島の原発事故で被災した女子高校生が「子どもを産んでいいのかな」と言ったという報道に触れ、「昔の自分と同じだ」と胸が痛んだそうです。
この記事を読み、私もとても共感しました。私がいつか子どもを産み、もしその子に放射能の影響があった場合、母親としてどれだけ自分自身を責めても足りないだろうと思います。たとえ元気に生まれたとしても、成長する過程で現れるかもしれない。さらにその子の子どもや孫に影響は出ないだろうかと、親として一生不安を抱えて生きていくのだろうと思います。

広島の被爆者の声に耳を傾けていると、福島で放射能と共に生活している私たちの想いと重なる部分がとても多く、福島がこれからたどる道が見えてくるように思います。

今、福島で暮らす人たちも、年々放射能の話題を口に出さなくなってきています。しかし、この問題に深く関わり色々な事を知れば知るほど、口を閉ざし何もしないという事は罪であり加害者と同等なのではないかと次第に思うようになりました。
核を作り出したのも、核に傷つけたれたのも、私たちと同じ人間です。
核を無くすことが出来るのも、私たちなのだと思います。

九州電力川内原発1号機が本日再稼働、9月中旬に営業運転予定

(2015年8月8日・11日朝日新聞掲載記事より)

各地で記録的な猛暑が続くなかで、国内の全ての原発は止まったままにも関わらず、電力供給にはゆとりがあります。

原発を持つ電力9社が7月末に出した今年4~6月期決算では、震災後初めて経常損益がすべて黒字になりました。原発ゼロでも業績が回復傾向にある背景には、火力発電の増加、家庭や企業の節電の取り組み、電力会社以外の「新電力」の新規参入が増えたことによる大手電力需要の減少などが挙げられます。
また、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)のもと、太陽光発電の導入量がこの4年間で10倍近くに急増しました。このことから晴れた日に発電量が多くなる夏のピークに対応し、猛暑続きでも電力供給の安定に繋がっています。

太陽光ピーク時肩代わり
2015年8月8日朝日新聞掲載記事2

2015年8月8日朝日新聞掲載の橘川武郎・東京理科大大学院教授(エネルギー産業論)によると、『需給状況をみれば電力は足りており問題ない。電力不足だから原発の再稼働が必要だ、という説明はもう成り立たなくなっている。だから、電力会社は原発の燃料コストの安さなどを強調している。再稼働を進めようと、最近では電力不足をやや大げさに言っていた面もあったのだろう。』と言っています。

事故時の責任あいまい
2015年8月10日中日新聞掲載記事

本日2015年8月11日に、九州電力川内原発1号機(鹿児島県)が再稼働しました。2015年8月10日中日新聞によると、川内原発周辺には大規模噴火の可能性が指摘されている火山があったり、過酷事故が起きた際の避難計画が規制委の審査対象ではなかったりと、住民からは不安の声が出ています。また、過酷事故が起きた際の責任は、国や立地自治体、電力会社を含め、どこに具体的な責任があるのかはっきりしないままです。

使用済み燃料40トン増 ー川内原発2基、再稼働でー
2015年8月3日福島民報新聞掲載記事

さらに2015年8月3日福島民報新聞によると、九州電力川内原発1・2号機の再稼働によりあらたに発生する使用済み核燃料は計約40トンに上り、貯蔵率は69%から73%前後に上昇すると見込まれるそうです。再稼働に同意した鹿児島県は、県内での最終処分を認めていません。海外のメディアでも、原発の廃炉で生じる廃棄物が今後増えることに触れ、高レベル廃棄物の最終処分政策が危機的状況にあると報じられています。

NHKの全国で行った世論調査では、『川内原発の再稼働に賛成ですか、それとも反対ですか。』という質問に対し、“賛成…32%”、“反対…57%”という結果が出ています。
また、『東京電力の福島第一原発事故を受けて、新しい規制基準が制定されました。あなたは、この新しい基準に適合した原発でも、住民が避難するような事故が起きるおそれがあると思いますか。それとも思いませんか。』との質問には、“あると思う…81%”、“ないと思う…10%”、さらに『原発事故に備えて各自治体が作成する避難計画について、政府は支援を行い、審査までは必要ないとしています。あなたは、このことについてどう思いますか。』という質問には、“支援で十分だと思う…8%”、“支援だけでは不十分で、避難計画を政府が審査すべきだと思う…82%”という結果が出ています。

朝日新聞の調べによると、全国の原発の30㎞圏にある医療機関の66%、社会福祉施設の49%が、避難先や経路、移動手段の避難計画をまだ作っていないそうです。
福島原発事故の際には、救出が遅れた病院で入院患者が体調悪化で相次いで亡くなりました。福島県内の関連死は1900人を超しています。

政府と電力会社の姿勢から、国民の意思を無視し、人命を犠牲にしても良いという本音が見えてきます。原発事故から4年半を経ている現在も、故郷を追われている人の数は約11万人に上ります。現在の福島の人々や自然の状況は、国も電力会社も十全に責任を果たさないことから、全く好転していません。むしろ、弱い人たちがますます弱くされて来ているのが実情です。さらに、福島市や郡山市など、人々が日常を営んでいる地域には、放射線量の高い「ホット・スポット」が場所を変えながら存在しています。見えない恐怖の中での生活を強いられているのです。

福島原発事故の現状と反省を踏まえ、教訓を徹底的に引き出すべきなのではないでしょうか。そして福島の惨事を経験した者だからこそ、伝えていく義務が、私たち一人ひとりにあると思います。

国民一人一人が真実を知り、意志を持ち声をあげること、そして発信していく事が今、私たちに求められているのだと思います。

世界的に注目高まる『地熱発電』日本は停滞を抜けられるか

(2015年7月26日福島民報新聞掲載記事より)

地熱発電 日本 停滞抜けられるか
地熱発電 日本 停滞抜けられるか

今、地熱発電へ世界的に注目が高まっています。
地熱発電は地中深くまで井戸を掘削し、噴き上がる蒸気や熱でタービンを回転させ発電します。自然が生み出す蒸気を使って発電するため二酸化炭素の排出量は火力発電の約20分の1と、地球温暖化対策にもなります。また、再生可能エネルギーの中でも太陽光や風力と異なり、気象条件を問わず安定した発電量を得られます。アメリカ、インドネシアに次ぐ世界第3位の火山国である日本は、発電量2347万kwの地熱資源があり、原発約20基分に相当しますが、その3%足らずしか活用していません。

これまでは国の原発優遇策の中で十分な支援がなかったことや、温泉業者に建設への反対が根強いことなどで、地熱開発が進みませんでした。福島原発事故後、政府は2030年までに地熱発電の容量を最大で約100万キロワットを増やすことを見込み、様々な規制緩和に動き出したことから、最近になって小規模ながら新たな地熱発電所が全国で運転を開始しています。

福島県でも、現在磐梯朝日国立公園内で国内最大級の地熱発電所建設計画が進んでいます。しかし、この建設計画に福島県の温泉業者は危機感を募らせています。
発電所の建設には地中から蒸気を抜くための井戸を掘ることが必要です。温泉業者は井戸によって湯量が激減したり、温度が下がったり、成分が変わったりするなどの影響を懸念しています。 福島県の温泉業者からは「地熱発電所建設の影響が温泉にあったという報告を国内外で聞いている。国のやり方は『まず地熱ありき』のようで、性急すぎる」「試掘をする前に、影響が出た場合の補償がしっかり示されなければ納得できない」との声が上がっています。

福島県には泉質が良く素晴らしい温泉が各所にありますが、原発事故以来すっかりさびれてしまいました。私も時々県内の温泉を巡りますが、どこも人の気配が薄く、その都度風評被害の深刻さを改めて実感します。廃業した温泉宿の佇まいは、目に焼き付いて忘れられないほど寂しいものでした。
福島県では全国に先駆けて、2040年までに県内の再生エネルギー導入率100%達成を目標としています。再生可能エネルギーの鍵となる地熱発電と、温泉街の復興が共に両立することを願いながら、今後もこの問題に注目していきたいと思います。

放射線測定器を借りてきて思う事

福島県郡山市役所では震災後より郡山市民を対象に、電子積算線量計を1か月間、ガイガーカウンターは1週間希望者に無料で貸出するサービスを実施しています。
私も昨日(2015年7月28日)郡山市役所へ行き、初めて借りて来ました。
電子積算線量計は電源を入れてから電池が切れるまで、1時間あたりに受ける放射線量が常に表示されています。貸出窓口の係員から、電子積算線量計については1ヶ月間毎日、表示された測定値とその日の屋内・屋外活動時間を記録するようにと説明を受けました。1ヶ月後貸出窓口へ電子積算線量計を返却する際に、記録した1か月間の積算線量から1年間の放射線量を推計し、予想される年間積算放射線量をその場で教えて頂けるとのことでした。

震災後、郡山市から郡山セントポール幼稚園に電子積算量計の提供があり、園児全員に配布しました。今は全園児の約半数が身につけて登園しており、幼稚園内では園児の持参した電子積算量計をかごにひとまとめに入れておき、部屋を移動する際にはかごを持って移動するようにしています。

(2015年7月29日福島民報新聞掲載記事より)

建屋カバー撤去始まる
建屋カバー撤去始まる

福島第一原発1号機では2015年7月28日から、原子炉建屋カバーの解体作業を始めました。本来この作業は2年前に始める予定でしたが、工事のトラブルなどで遅れが生じていました。建屋カバーを外すことにより放射性物質の飛散が起こり、空間線量が上がるのではと福島で暮らす方々から不安の声が聞こえています。県外に住む私の家族からも、建屋カバー解体作業予定の報道があるたびに、外出を控えるよう連絡が来ます。
今、原発問題プロジェクト事務所の近辺の定位置で同じ時間に放射線量を毎週3回計測しているので、今回の建屋カバー撤去により空間放射線量に変化があるか、参考になればと思っています。

目に見えない放射線を常に気にしながら生活しなくてはいけない者にとって、ガイガーカウンターや積算線量計は心の拠り所となっています。私の自宅ではガイガーカウンター付の腕時計をリビングのテーブルに置きっぱなしにしていますが、原発廃炉作業のトラブルの報道があったり、大きな地震があった時など、放射線への不安が起こり、ガイガーカウンターに目が行きます。幸い我が家はマンションの4階なので、これまではいつ見ても0.07~0.09µSv/h程度で大きな変化は見られません。小さな腕時計に付いているガイガーカウンターなので、その性能についてもどの程度正確なのか定かではありませんが、私にとってはとても大きな存在となっています。

福島県郡山市には適所にモニタリングポストが設置されており、常に空間線量が表示されていますが、自分で実際にその場所でガイガーカウンターを使って計測してみると、モニタリングポストに表示されているよりもはるかに高い放射線量であることがしばしばあります。
1ヶ月後積算線量計の結果がどのようなものでも、完全に信用することは出来ないかもしれませんが、ひとつの拠り所となると思います。

積算線量計の結果は、またこのホームページでご報告させて頂きたいと思います。

ー福島県知事 欧州訪問ー福島の光と闇を世界に発信

(2015年7月14日~16日福島民報新聞掲載記事より)

2015年7月12日から18日にかけて、福島県の内堀雅雄知事が海外訪問としてスイス・イギリスを訪問し、福島の現状を発信し風評払拭の協力を求めています。

福島県では全国に先駆けて、2040年までに県内の再生エネルギー導入率100%達成を目標としています。スイスは東京電力福島第一原発事故を受け、段階的な脱原発を決定し、2034年までに現存5基の原子炉を廃止し、水力発電や再生可能エネルギーへの転換を目指しています。福島県はスイスのそうした先進事例を参考にし、原子力に頼らない社会づくりを進めようとしています。

福島の原発事故後に原子力撤廃を決定した国はスイスの他に、ドイツ、イタリア、イスラエル、シンガポールが挙げられます。被曝国でありながら原発依存を続けようとしている日本は、世界に遅れをとっています。

今回知事はスイスのジュネーブ、シャンシー・プニー水力発電所、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、そして廃炉予定のミューレベルク原子力発電所を視察しました。
知事はIFRCを訪問した際事務総長に「国も県も市町村もどう原発事故に対応すべきか的確な指示ができなかった」と吐露したところ、シィ事務総長より「正直に『できなかった』と打ち明けることは勇気の要ることで、復興に向けた長い旅の良い始まりだと思う」と連携強化の約束を得ました。
又、ミューレベルク原子力発電所の廃炉は少なくとも15年はかかり、廃炉費用の総額は約1千億円にのぼります。放射性廃棄物は20万トンでそのうち約3千トンは地中深くに埋設する想定です。視察に同席したスイス連邦政府エネルギー庁の長官は、原発の廃炉について「技術的な課題や安全性の確保を最優先に判断するものであり、政治的な問題で決められることではない」と強調しています。

さらに知事はスイスで開催された交流会で「仮設住宅を訪れるたびに『早くこの状態から助けてくれ』との悲痛な叫びを聞いている」と避難者の心情を伝えています。

私は福島県郡山市で暮らしていますが、この地で生活している人達が放射能について次第に語らなくなりつつあるのを感じています。そうした傾向は、我慢強い東北地方特有の人柄と、福島で暮らすことを選択したからには放射能を受け入れるより他には無いという想いから生まれているのでしょう。ある女性は、「自分が住んでいる郡山市について、県外に住む息子からも放射能の問題は収束していると思われている。だが普段歩いている道路は0.5μSv/h前後あるなどホットスポットはあちこちにある。放射能の問題は一生抱えていかなくてはいけないことであり、抱えるものがあまりにも大きすぎる。不安は常にあるが年々言葉に出せなくなっている。」と胸の内を語ってくれました。

しかし、同じ悲劇を繰り返さないために、言葉に出し伝えていく事も大切です。福島で暮らしている者同士放射能にまつわる想いを語り合っていると、たとえひとりの小さな声だとしても、科学的な根拠よりもずっと人を動かす大きな力があるのを感じます。

そしてその声が世界に広がり、福島の闇が光に変わる日が早く来ることを、私たちは願っています。
現地で生活している者だからこそ、分かち合い、助け合っていけるのだと信じて、ひとりひとりが胸に秘めている声をこれからも拾い集め、発信していきたいと思います。

平和の灯 守れる? 印のプルトニウム抽出 容認方針

(2015年7月10日中日新聞掲載記事より)

日本からインドへの原発輸出を可能にする目的で進めている原子力協定交渉で、政府は使用済み核燃料の再処理を認める方針です。
この使用済み核燃料であるプルトニウムは核兵器への転用が容易で、日本が原発輸出国の立場で相手国の再処理を容認するのは初めてとなります。
日本とインドで協定が締結されれば、福島原発の事故後国内での原発新設が困難となっていた東芝や日立製作所など原発関連企業にとっては、急成長しているインドの原発市場への参入が可能になり、大きな追い風となります。

すでに米国とインドで結んでいる「米印原子力協力協定」では、使用済核燃料の再使用を認めています。日本政府内には、インドの再処理容認に慎重論がありましたが、共に原発売り込みを狙う米国が「米印原子力協力協定」で容認しているため、米国に追随して日本も従来の姿勢から大きく踏み出すことを決めたのです。
又、インドを特別扱いして関係を深め、中国を牽制したいという狙いもあります。

国内の原発再稼働、国外への原発輸出のどちらからも、政府が原発を肯定している姿勢が伝わってきます。このままでは広島、長崎、そして福島で原子力の犠牲になった人たちの想いが風化されていく懸念があります。
福島で暮らしている人々から、福島原発事故からの年月の経過と共に、次第に放射能のことを忘れようとしている傾向を感じます。それはこのような日本の政治の方向性から影響を受けているのかもしれません。
今、福島で暮らす自分に出来ることとして、経験した者だからこその声を拾い、残していくことの義務を感じています。

そして平和のために、私たち一人ひとりが声をあげ、大きな声として正しい方向へと導いていく努力が必要なのだと思います。

低線量の白血病リスク ごくわずかに上昇 欧米の作業員30万人調査

(2015年7月3日福島民報新聞掲載記事より)

低線量の白血病リスク ごくわずかに上昇 欧米の作業員30万人調査
低線量の白血病リスク ごくわずかに上昇 欧米の作業員30万人調査

国際がん研究機関が、低線量の放射線を長期間浴びることで白血病のリスクが上昇することを発表しました。欧米の原子力施設で働く作業員30万人以上を調査した結果、1ミリシーベルトの被ばくごとに白血病を発症するリスクが3/1000程度上昇することがわかりました。
「低線量被ばく」は症状が表れるまで数年かかるため、被ばくとの因果関係を調査しにくく、国際放射線防護委員会(ICRP)では年間100ミリシーベルトを超えると発がんのリスクが高まると定めていました。
しかしこの結果から、100ミリシーベルト以下の低線量による影響が無視できないことが明らかになりました。

原発事故後、ここ福島県郡山市で暮らす人からも「鼻血が出る、下痢、異常な疲労感」などの体調不良を訴える声がよく聞こえていました。政府はそのような体調不良と放射線との関係を否定していましたが、自分自身の体感からも低線量被ばくとの関係を疑う気持ちはぬぐえません。

チェルノブイリの原発事故が起きて29年ですが、現地では今も原因不明の体調不良で苦しんでいる方がたくさんいます。ベラルーシの子どもたちは、今でも年に1回、甲状腺の検査を受けています。本来、子どもの甲状腺がんは非常に珍しく、小児人口100万人に1〜2人が普通ですが、チェルノブイリ事故後のベラルーシでは、徐々に増加していきました。最初は年に1〜2人増える程度でしたが、5年目になると一気に28人になり、そのあとはうなぎのぼりで95年は90人になりました。

低線量被ばくは影響が表れるまで時間がかかることから、福島で暮らしている人も年月の経過と共に様々な健康上の問題が出てくることが予想されます。
たった一度の原発事故により傷ついた人たちへの心と体のケアは、終わりのない課題になるのだと思います。

福島原発の凍土遮水壁、年度内完了困難

(2015年7月5日福島民報新聞掲載記事より)

凍土遮水壁 年度内完了困難に
凍土遮水壁 年度内完了困難に

東京電力福島第一原発で増え続ける汚染水対策の切り札は、1~4号機の建屋周囲1.5キロの地盤を凍らせる「凍土遮水壁」です。これは、地下に約1500本の凍結管を埋め込んで冷却材を循環させて地盤を凍らせ、地下水流入を抑える計画です。4月末に試験凍結が始まりましたが、技術的な問題が生じ工程に遅れが生じています。原因を究明し対策する方針ですが、終了時期の見通しは立っていません。年度内の凍結の完了は難しく、このままでは廃炉工程に影響が出る可能性があります。

第一原発3号機燃料取り出し 設備設置難航か 高線量と損傷、作業阻む

又、使用済み核燃料プールからの燃料取り出しについても、2018年に3号機での作業を予定していますが、現場の放射線量が高く難航が予想されます。3号機周辺の空間線量は最高で1時間当たり約220ミリシーベルトと依然として高く、作業を困難にしています。

現在、構内で働く作業員は1日6千~7千人。多くが除染や汚染水タンク増設、凍土遮水壁の工事などの作業に当たっています。事故前の運転中や定期検査のピーク(4千~5千人)を上回る人員規模となっています。
高線量下の作業もあるため、被ばく線量の管理は欠かせません。労働災害も増加傾向にあるといいます。1月にはタンクの検査中の男性作業員が10メートルの高さから落下して死亡する労災事故が発生しました。

事故から4年余りたちますが、現場は過酷な労働環境で、廃炉作業の道のりは険しいことが予想されます。

ベトナム・ヨルダンへの原発輸出について

ロシアが建設する予定のニントゥアン第一原発につづいて、日本が建設する予定になっている『ベトナム ニントゥアン第二原発』。もし事故があれば、隣のカンボジアはもちろん、タイにまで影響が及びますが、予定地の人々に危険性が知らされることなく、すぐ近くに移住して生活することになっています。
原発予定地の周辺の特徴としては、ニンチュア国立公園と隣接・重複しており、絶滅危惧種のアオウミガメの生息地となっています。又、人口18万人のファンラン市が20km圏内にありますが避難計画は不明です。
ベトナムは事実上の一党独裁体制で、市民が国家事業に反対することはほぼ不可能です。既にネット上で反対を表明した人々に、暴力や不当拘束などの圧力がかかっており、国家事業ありきで計画が進行しています。

事故のリスクは工事・運転中共に高く、放射性廃棄物の処理についての見込みもたっていません。さらに福島原発事故クラスの事故が生じたときの損害賠償体制も不明です。
原発輸出は日本の経済成長のためとまで言われ、ベトナムに原発を作るための調査には、5億円の復興予算まで流用されています。現在日本政府は、税金により日本企業の原発輸出を推し進めようとしていますが、これらの公的信用付与の際、放射性廃棄物処理や事故の対応、情報公開などに関して十分な審査指針は現段階では存在していません。
福島第一原子力発電所の事故処理もままならず、避難者の将来の先行きも見えない…様々な問題を抱えても、日本政府は福島で大事故を起こした原発を維持する政策を変えていません。

広島、長崎の原爆、そして福島での原発事故を経験した日本の政府こそが、世界の脱原発をリードできるのではないでしょうか。