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パレスチナの現状に、みなさまの祈りを

2002年3月20日
エルサレムおよび中東聖公会
エルサレム教区主教 リアー・アブ・エル-アッサール

親愛なる兄弟姉妹たちへ

 主イエス・キリストのみ名によって、エルサレムから皆様に対してサラアム(平和)と恵みのご挨拶を申し上げます。

 聖公会のエルサレム教区に属する私たちは、聖地が、人命の悲劇的な消失、数え切れないほどの不公正や、私たちの同胞を含む無辜の人々の水道や病院、学校、家などの破壊と損失によって、絶えず劣悪化し続けている状況に絶望的な思いを寄せています。私たちは、私たちの同労者や友人たちに、あらゆる力を尽くして、私たち自らの故国におけるこの苦痛と苦しみを終結させるよう願い求めます。特に最近露骨となっているイスラエル軍によるパレスチナ人に対する敵意や、パレスチナ自治区への再占拠は、両陣営にとって壊滅的かつ悲惨であることを示しています。国全体が武力によって支配されているなどということは常識では考えられません。公正を行うことが、この軍事的緊張を解決する唯一可能な方法です。このこと全ての根本原因は、イスラエル人によるパレスチナの占領であり、この占領を終結させねばなりません。

 現在私たちは、私たち同胞の多くの苦しみを全く無視するという事態に置かれています。戦車や戦闘員による、最近の侵入によって、パレスチナ人の多くの町には計り知れない苦しみが生じております。ベツレヘムではつい最近、3000人の民が近隣の難民キャンプから馬小屋広場に集まりました。ベツレヘムのいろいろな組織が、これらの人々に食料を与える必要に迫られています。ルーテル教会系の学校はイスラエル軍によって占拠され、ローマ・カトリック系のベツレヘム大学はミサイル攻撃を受けていずれも閉鎖されています。戦闘が激しくなったときには、ラマラの二つの病院への送電が停止され、緊急医療の欠如のために多くの人々が大きな被害を受けました。

 イスラエル軍の戦車がラマラの中心地から撤退した直後に、私はラマラを訪問して帰ってきたところです。私の同僚司祭でラマラ聖アンデレ教会の牧師であるジョージ・アルーコプティ司祭は、イスラエル軍の侵入後の町の状態について、次のように報告しています。
「約150台の戦車が町に入り、文字通り全ての街角を占拠し、怪我人を病院や診療所に運ぶための通行も含め、一切の通行が禁止されました。イスラエル軍は家やアパートの建物を占拠し、各家族は年齢や健康状態に拘わらず一軒の家に集まるよう求められました。教会の信徒が持つ車の多くは戦車によって破壊されました。エヴァンジェリカル・ホームの子供たちは、数日間恐怖とショックの中で生活することを余儀なくされました。私たちは動くことも食事をとることもできないまま3日間、厳しい拘禁生活を送りました」。

 占領軍の兵士が、ナチスの軍隊がユダヤ人の家族を示すために使った目印と同じ大きな×印を、スプレイでつけたアパートを見てぞっとしました。占拠されたアパートには、故アウデー・ランティシ司祭夫人のパトリシアさんの住居も含まれていました。彼女は70歳になる英国市民です。カナダ人の友人でパトリシアさんのところに滞在していたケント・ウィルケンス氏は、兵士による建物侵入後の状況について次のように語っています。「私たちは十分に食料を提供されました。ラマラの水道は止まったので、1日かそこら建物には水がありませんでした。電気はありましたが、ホールに入ることは許されませんでした。私たちは2人の老人を含め13人おり、1歳6ヶ月から10歳までの10人の子供がおりました。大人のうちの2人はエルサレムにあるオーグスタ・ヴィクトリア病院に勤める医者でした。彼らは勤務先の病院に行くことも、患者に電話したり患者からの電話を受けることも禁じられました。兵士たちは彼らの言う安全を確保するために、人質として4家族を捕虜にする必要はなかったのです」。

 紛争の継続は聖地にある教会の働きに劇的な影響を及ぼしています。私たちの施設や教会の誰もが、この状況から生ずる経済の破壊的な衝撃を感じとっています。新しい世紀が始まった時、私たちは私たちの喜びが増し加わることを予見していました。残念ながらそうはならず、私たちは友人や同僚の生活の質が一層困難な環境に転落していくのを目撃しています。

 私たちはその奉仕的職務を世界中の数え切れない友人の支援と祈りなしに遂行することはできません。皆様が私たちと共にあるのを知るということが、私たちの生活と奉仕的職務を大きく変えるのです。私たちは多くの方々が連帯を表明し、特に、祈っていることをお伝えくださる多くの方々によって非常に力づけられています。皆一緒になり、手をつなぎ共に努力しましょう。この地に住む者の代わりに、皆様の家族に、友人に、同僚や隣人に、政治家や政府の指導者に呼びかけてください。私たちは公正を伴う平和、真理を伴う公正、また義を伴う真理、そして全ての人々の安全と擁護のために祈ります。平和だけが残された道です。国連決議242、338、194に則った真理と公正のうちに確立される平和だけが、この平和となりうるのです。最も確かな安全は和解した隣人から生まれるのです。

 私たちが主の召しに固く立てるよう、助けてくださる皆様に祈りと感謝とのご挨拶を申し上げます。神の御祝福が豊かにございますように。

 キリストに在って