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2002年12月25日 170号 《速報版》
日本聖公会管区事務所
〒162‐0805 東京都新宿区矢来町65
電話03(5228)3171
FAX 03(5228)3175
発行者 総主事 司祭 三鍋 裕
 



クリスマスの思い出
管区事務所総主事 司祭 ローレンス 三鍋 裕
 今年のクリスマスはどうも勝手が違います。いつもなら教会委員の選挙の準備から始まり、早々といくつものクリスマス行事があって忙しいものです。毎年同じようなパターンでしょうか。教会勤務になる前のいろいろなクリスマスを思い起こしています。

 オーストラリア北部のクリスマスは酷暑の真夏。この国にはサンタクロースはカンガルーに乗ってくるはずなのですが、実際には消防車に乗ってきて子どもたちを喜ばせていました。ご降誕の恵みには変わりがあるはずはないが、やはり戸惑いました。オランダでは12月6日の聖ニコラス日にコープ・マイターを着たサンタが現れます。

 やはり英国のクリスマスは親しみやすかった。ただし、クリスマスイヴは礼拝以外何もなし。盛大なパーティーを祝うのかと思ったら本当に何もなし。まあ降誕日前日は斎日でもありましたし、25日のクリスマス聖餐が終わってから家族で祝います。どの家族にも一年で一番楽しい時なのでしょう。その楽しい時に外国人学生に寂しい思いをさせるのは可哀想と、ご招待が来る。日本で言えば、ひとり寂しく正月を過ごすようなものでしょうか。ありがたいけれど、せっかく学校が休みなのに、ワカラナイ英語の中でお行儀良くしているのは大変でした。以後、毎年冬休みには旅行に出かけますからと、辞退して逃亡することにしました。おかげで、雪の中を当てもなく放浪することになりましたが。

 後になって英国の田舎の港に勤務するようになって気がつきました。徹底しているのです。地域によって違うかもしれませんが、鉄道もバスも運休、高級店は別ですが、ホテルやレストランも休み。ベッド・アンド・ブレックファーストと呼ばれる安宿も客を追い出して、この時だけは家族だけで祝います。店は勿論休み。停泊中の船も、港湾労働者が休みだから荷役が休み。出航できないから岸壁にロープで船を縛り付けて、乗組員は鉄道の動いているうちに自宅に帰ります。帰る家族がいればですが。大手の船会社は少々荷物を積み残しても船を出航させないと、何日分もの経費を損するとも聞きました。病院もガラガラ、帰れるご病人は出来るだけ家に帰してクリスマスを家族と一緒に過ごさせてあげる、実は看護師たちが休めるようにとの魂胆かもしれませんが。とにかく万難を排して、家族でクリスマスを祝うわけです。神聖といって良いほど大切にされるときなのです。

 問題はだれも一緒に祝ってくれない孤独な人々です。全部閉まっていますから行く所がないのです。皆が家族や友人と楽しく暖かく過ごしているこの時、彼らは一年で一番寂しい思いをします。病院でも、病気が重くて家に帰れない人には家族が見舞いにきます。帰れるのに迎えてくれる家族のない人は孤独感で荒れます。酒をぶら下げて訪問します。病院でもこの酒は黙認されました。シェリーで乾杯する程度ですが。我が家は港の牧師ですから行くところのない船員、失業船員、自称船員が集まります。幼かった子どもには余り教育的でないクリスマスを過ごすことになります。普段は酒に対して厳しい私でも(飲み方の意味ですよ)、クリスマスだけは例外にしなければならないほど、寂しい仲間たちでした。日本とは状況が違います、しかも遠い昔のことです。でも私はクリスマスになると、あの英国の小さな港のクリスマスを思い出すのです。神様は人々の寂しさの中に生まれてくださったといわれる意味を繰り返し考えるのです。結論が出ると思いませんが。
 
 降臨節も大詰め、せめて最後はキッチリと決めてクリスマスをお迎えしましょう。そして心から喜び祝いましょう。楽しみましょう。でも、その喜びと楽しみが私たちの中だけに閉じ込められませんように。平和の主を迎えようとするこの時、本当に平和を祈りましょう。「平和って、いいわねえ。戦争になると愛しい夫は真っ先に出動しなければいけないんですもの」といっていたのは、ヒッチハイクで拾ってくれたベルギー海軍士官の奥さんでした。攻撃する方もされる方も、あまりにも悲しいではありませんか。神様の平和の中にあって、すべての人が新しい命を与えられるクリスマスでありますようにお祈り申し上げます。そしてもう一度、暖かい家族のような平和をつくりましょうよ。
(読みやすくするために、文字を2色使いにしました。)
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