TopPage Office Special Diocese Schedule Menu

*この声明書は3月5日(大斎始日)の時点で作成し、関係諸方面に送付したものです。3月20日には、アメリカ、イギリスによるイラク攻撃が開始されました。情勢の急激な動きを見つめ、さらに新たな意思表示の準備をしています。
主にある兄弟姉妹の皆さんへ
日 本 聖 公 会
首座主教 ヤコブ 宇野 徹
正 義 と 平 和 委 員 会
イラク問題に関する声明
 キリストの平和が皆さんとともにありますように。
 現在、世界はイラク問題を巡って、戦争か平和的解決かを選択する極めて重要な局面にあります。この問題についてのわたしたちの考えを、主にある兄弟姉妹の皆さんに明らかにし、日本聖公会の全教会で、戦争を回避するための祈りが献げられることを願っています。

 神は天地万物をお造りになり、ことに人間をご自身のみかたちに似せて造られました。これは、すべての人間が神に愛されている、かけがえのない尊い存在であることを示しています。ですから神は、モーセをとおして、「あなたは殺してはならない」(出エジプト20:13)という戒めを与えられ、神の愛の対象である人間が、互いの命を奪い合うことを禁じられたのです。神に愛されている人間の尊い命を奪うテロや戦争は、この戒めに反する行いです。わたしたちは、あらゆるテロ行為と戦争に反対することを表明し、アメリカ政府に、この戒めを守り、イラクに対する武力攻撃の政策を、直ちに止めるように要請します。

 
人間の歴史は、この戒めを守ることなく、戦争や大量殺裁を繰り返してきました。悪に対して悪をもって報いるというのが、罪人である人間の行いでした。神は、わたしたちをこの罪の鎖から解放するために、み子・主イエス・キリストをお遣わしになりました。主は、「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい」(マタイ5:)と教え、そしてその言葉を生きられました。十字架につけられた主は、「父よ、彼らをお赦しください」(ルカ23:34)と祈られたのです。今、アメリカ政府は、イラクを「悪の枢軸」と呼び、大量破壊兵器の存在とテロ支援を口実に、戦争を起こそうとしています。イラクという「悪」に対して、アメリカは戦争という「悪」で対抗するというのです。もしアメリカが実際にイラクを攻撃すれぱ、さらなる「悪」が登場し、世界は「悪」で覆われることになるでしょう。この悪の鎖を断ち切るためには、主キリストによって示された信仰に堅く立ち、これを実行する勇気が求められます。わたしたちは、アメリカ政府の指導者に、この信仰と勇気が与えられるように祈ります。

 日本は、先の戦争による尊い内外の犠牲者の上に作られた「平和憲法」をもっています。憲法第九条は「戦争放棄、軍備及び交戦権の否認」を躯っていますが、これは、キリストが教えられた信仰と完全に一致します。全聖公会は、すでに1930年に開催されたランベス会議で、「国際紛争を解決する手段としての戦争は、我らの主イエス・キリストの教えと模範に相容れない」との声明を出していますが、憲法第九条にも、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とあります。
しかし日本政府は、憲法に反して、アメリカのイラク攻撃支持
を表明し、後方支援を名目に海上自衛隊の艦艇を海外に派遣し、さらには今国会に、戦争のできる国を作るため、有事法制関連法案を上程しようとしています。わたしたちは、日本政府に対して、戦争協力や戦争のできる国作りではなく、平和憲法を遵守して、平和を希求する政策実行を要請するとともに、イラクだけでなく、世界のあらゆる国々、ことに経済的に豊かな「先進」諸国と核保有国が、大量破壊兵器のみならず、軍備そのものを否認する道を歩むように求めます。

 テロや戦争の背景には、社会的不正義が存在しています。この不正義がボLされなければ、平和を実現することはできません。正義をともなわない真の平和は存在しないのです。主は、「平和を実現する人々は幸いである」(マタイ589)と教えられましたが、現に世界に存在する不正義によつて、貧困、抑圧、差別の中に生きている人ぴとの叫びに耳を傾け、これら虐げられている人びとのために働くこと、すなわち正義のために働くことが、平和を実現することに繋がっているのです。
正義と平和のための働きは、わたしたちの信仰の実践そのものです。日本聖公会は、過去にお
いて正義と平和の実現のために働くことができませんでしたが、1996年の総会で『戦争責任に関する宣言」を決議して、かつての戦争協力の罪を告白し、これからは「神の民として正義を行うことへと召されていることを自覚し、平和の器として、世界の分裂と痛み、叫びと苦しみの声を聴きとることのできる教会」に変わる決意を内外に表明しました。イラク危機に際して、虐げられている人ぴと、ことに今この時、戦争の恐怖の中で生きているイラクの人びとの声に耳を傾け、戦争反対の声を上げ、正義と平和の実現のために、共に祈りを献げ、行動をしてゆくことが、求められています。

 本日から大斎節が始まりますが、わたしたちの信仰生活にとって大切なこの期間を、自分の信仰の修練の時としてだけではなく、正義と平和のための祈りと行動の時として守ってくださればと、願っています。  
主にあって  
2003年3月5日 大斎始日
TopPage Office Special Diocese Schedule Menu