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《海外出張報告》

「世界宣教における変革と伝統」

聖公会宣教団体協議会

Transformation and Tradition in Global Mission

The Anglican Communion Mission Organizations Conference

0032月l2日〜18日、キプロスで開催された標記協議会に、ウイリアムス神学館より館長の吉田雅人司祭、聖公会神学院より非常勤講師の香山洋人司祭が参加いたしました。会議内容については全体の日程をご報告することで代えさせていただき、両名を代表して香山が参加の感想を書きました。なお、協議会終了後に発表された「協議会声明」、「イラク危機に関する祈り」、資料として配布された「聖公会における宣教のガイドラインと基本原則」の一部分の私訳を添付いたします。

0034月9日 報告者 司祭 香山洋人

.日程及び「添付資料」は紙面の都合上省略します(編集部)

U.協議会に参加して

このプログラムはACCの一部局である「全聖公会宣教と福音伝道常置委員会」(Inter-Anglican Standing Commission on Mission and Evangelism=IASCOME)の主催によるものだが、2001年に組織されたISCOMEはMISAG以降、CMS、SPGなどの歴史的な宣教団体とその後新たに組織された種々の宣教団体などの連絡、協働関係を模索する活動の一環として行われたといっていいだろう。今回準備資料として配布された資料によると、IASCOMEが把握しているだけで、世界l5カ国において、管区に 承認され支援を受けている組織、ボランテイアによって運営されている組織などを含めて「宣教団体」(Mission Organization)を名乗る約80の団体や組織がある。今回の協議会は特に、これらの宣教団体と管区、教区とのパートナーシップの構築と、各地で個々ばらばらに活動している宣教団体を全聖公会としてネットワーク化をはかろうとすることが課題であったように思われた。

協議会自体がネットワーク作りを主眼としていたためか主題も極めて漠然としており、全体の方向性を形作るようなプログラムはなく、講演を聴くことの他に、グループごとに学んだり話し合ったりすることが中心で、聖公会として世界宣教に関する何らかの見解を表明するとか、宣教団体に関して何かを発言するというような、協議会としての果実は不明確であったといわざるを得ない。

MISAG自体がそうであり、「福音伝道の十年」がそうであったように、IASCOME、そして今回の協議会もCMSによる強いリーダシップと影響力が感じられた。もちろん、ワークショップの分科会の他ではCMSの名前が前面に出ることはなかったのだが、協議会全体のモデレーターはCMS総主事のティム・ダーキン司祭であり、USPG総主事のマノ・ルマルシャ主教とそのスタッフは一参加者以上の役割は担っていな かった。

 おそらくすべての聖公会の国際会議がそうであるように、この協議会も英、米の教会、宣教団体とアフリカ大陸が中心であり、欧州、太平洋地域、北東アジアなどが話題の中心におかれる場面は多くなかった。特に、歴史的な海外宣教団体が一定の役割を終えた日本聖公会から参加した者として、今回の協議会の持つ積極的な意味を図りかねる思いもあった。もちろん、個人的な学びとして今回の協議会は実に有意義なものだった。「宣教団体」の現実味を持たない者としては、80にも及ぷ各種の宣教団体が世界中で活動しているという事実や、そのプログラムを知り現場で働く人々と出会い話を聞くという経験はまたとないものだったし、日本聖公会にも深く関係するCMSのような海外宣教団体のボリシーをあらためて学ぶことができ、その体質とでもいうべきものを直接感じることができたことは貴重な経験であった。ランベス会議が非英語圏参加者のために通訳を用意したのは前回からとのことだ が、この協議会も英語を共通語とすることが暗黙のうちに決められていたし、非英語圏参加者たちに対する配慮は必ずしも十分ではなかった。こうした英語中心主義的発想はプログラムの随所に見られたが、これらは今後克服されるべき聖公会の課題の一つであろうと思う。

この協議会の会場がなぜキプロスなのかとの問いに対し事務局の担当者は、施設や実質的な利点の他に、宣教を主題とする我々が聖パウロの宣教旅行を想起すること、困難な状況にある聖公会をはげます意味があると答えた。しかし、キプロス聖公会の管轄地域であるイラクが戦争の危機に瀕する中、主催者の意図を超えてこの協議会の開催地が特別な意味を持つことになった。しかし、キプロス聖公会のハンドフォード主教が、イラクの危機的状況もさることながら、まずはパレスチナ問題に注目して欲しいと訴えていたことがたいへん印象的だった。イラク危機の中、イスラエルによって行われている不正義が国際社会の関心事でなくなりつつあることへの警鐘であった。

キプロスは南北に分断された島でもある。今回、バウロの足跡をたどるプログラムとして参加者は南北それぞれのキプロスを体験した。わたし自身は日本ではあまり話題にならないキプロスにおける政治的、宗教的な対立の現実を感じながら、一方で聖公会の課題について考えざるを得なかった。キプロス問題はギリシャ正教とイスラム教という背景を異にするグループの対立に端を発している。しかし、英国統治の時代と、そこからの独立という過程の中で、今は分断の苦しみにあるこの地に対し英国がどのような責任を持つべきか明確にする必要があるのではないか。このような観点からわたしは声明文作成の過程で、正義と和解を唱える教会自身の再検討ど侮い改めの必要性に触れる提案をしたが採用はされなかった。

 キプロス聖公会は、キプロスに滞在する英国人を中心とする聖公会信徒のための教会であり、19世紀来の聖公会の世界伝道の姿をそのまま継承するかのように思えてならなかった。もちろん、地域の正教会とも協力関係にあるとのことだったが、今回の協議会が「非アングロサクソン教会としての聖公会」という課題を認識しながら行われていただけに、現実の困難さを認識させられる思いだった。

V.今後の課題

IASCOMEは2001〜05年の任期で活動し、その活動をACCに報告することになっているが、今後日本聖公会がIASCOMEからの呼びかけに応答する場面がどのように生じるかは未知数である。今回も多くの準備資料が配られたが、それらはすべて英文であり、日本聖公会の中で広く活用される可能性は極めて低いといわざるを得ない。今回、試みとして参加者である香山が訳したものを添付したが、今後可能な限り、私訳であっても資科を翻訳しホームページなどで公開することが必要と思われる。また、配布された宣教団体の一覧には日本聖公会のものは一切ないが、米国聖公会の「KEEP米国委員会」が掲載されているなど、日本聖公会からの情報提供が不十分であることも見受けられた。この機会に、日本聖公会の「宣教」に関わる団体、組織の現状について調査することも有益かもしれない。 

(東京教区司祭・立教学院チヤプレン)
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