事務所だより一覧へ(旧)  事務所だより一覧へ(新)
前ページへ
 
管区事務所だより
2005年3月25日 第194号
Page5/5



首座主教会議声明 2005年2月


 

1. アングリカン・コミュニオンの首座主教ならびに合同教会の議長として、私たちは2005年2月20日から25日にわたって、カンタベリー大主教ロワン・ウイリアムズ博士の招待により北アイルランド、ニューリーのドロマンティン会議センターで会合を行った。私たち35名が出席した。(注1. ブルンディの首座主教はご家庭のご不幸のため、ホンコンの首座主教は健康上の理由で、北インド合同教会議長はやむを得ない所用のため欠席された。)私たちは、この会議センターを運営している、ローマ・カトリックのアフリカ・ミッションズ修道会の方々からの暖かい歓迎、またアイルランド聖公会、特にロビン・イームズ大主教とその夫人が私共のホストとして迎えてくださったことに深く感謝している。
2. 私たちの会議は、アイルランド聖公会が公式に私たちを歓迎してくださった、アルマーの聖パトリック大聖堂での夕べの礼拝を始め、常に共同の祈りと礼拝の流れの中で行われた。月曜日と火曜日は、カンタベリー大主教のご指導のもとに、大斎節のテーマであるキリストの三つの誘惑をめぐって、聖書研究と祈りと沈黙の時を守った。会議が、寛容の精神と互いの誠実さを尊ぶ心によって、キリスト者の愛と善意に満ちたものであったことを神に感謝している。
3. 会議は先のインド洋の津波をこうむった諸管区と、その救援活動を行っている諸聖公会からの報告をもって開始された。私たちは、インド洋の沿岸全体、ことに東南アジア、東アフリカ、インド洋、南インド、セイロン聖公会の諸管区の犠牲者ならびに現在も継続中の救援と復興の活動のために祈りを捧げた。
4. この首座主教会議の最も緊急な仕事は、「ウィンザー・レポート2004」を検討することであった。「ウィンザー・レポート2004」は、コミュニオンに関するランベス特別委員会(注2. この委員会は2003年10月に開催された首座主教会議の要請によって、カンタベリー大主教により設置された。)が、北アメリカの聖公会の営みの中で起ったこと(注3. 2003年5月にカナダ聖公会の一教区で、同性間の婚姻の祝福式を認証したこと、及び同じ年の11月にアメリカ聖公会において同性間の深い関係にある主教を聖別したこと。)に照らして、アングリカン・コミュニオンの将来についての諸勧告を提出したものである。
5. 私たちは、「ウィンザー・レポート」の諸勧告についての検討に何時間をも費やした。まず、特別委員会の議長を務めたロビン・イームズ大主教から、その委員会の任務について聞き、次に、ピーター・クォン大主教が着手された「報告受容調査グループ」を引き継いだ、スコットランド聖公会ブルース・キャメロン首座主教の報告を聞いた。(注4. このグループは2004年10月「ウィンザー・レポート」発刊の際、首座主教会議常任委員の手によって立てられ、アングリカン・コミュニオン内部及び私たちのエキュメニカル・パートナーからの反応と応答とを受けとめ調査することとなっていた。)私たちは、このグループがアングリカン・コミュニオン内外から受け取った322にのぼる応答を慎重に分析・検討した。細い点についての疑義の表明はあったものの、これらの応答は、「ウィンザー・レポート」の諸勧告におおむねかなりな程度の支持を示していた。(注5. イームズ大主教、キャメロン首座主教の報告および「報告受容調査グループ」の調査結果は、以下によってアクセスできる。
[イームズの報告]http://www.aco.org/windsor2004/presentation.cfm
[キャメロン報告とその関連資料]http://www.aco.org/commission/reception/report.cfm
6. 続いて、私たちはこれらの応答についての私たち自身の検討を行った。極めて明快なことが数多くある。1998年のランベス会議の決議(1.10)で表明された人間の性の本質についてのキリスト教の教えの標準的なもの、それは、アングリカン・コミュニオンの圧倒的多数の主教によって尊重されるべき立場として採択されたものであるが、それが最近北アメリカで起こったことによって深刻に傷つけられたと、多くの首座主教は深い懸念を抱くことになった。同時に、アメリカ聖公会とカナダ聖公会で起こったことは、完全にそれぞれの法規上の手続と要件に合致して進められたことが認められる。(注6.2003年10月の声明において、私たちは、次のように述べた、「アメリカ聖公会総裁主教は、アメリカ聖公会の新主教の選挙と承認は、法規の枠組みの中で行われたことであると、説明した。」首座主教として、私たちが、他の管区の法規上の手続きに判断を下すべきではない。私たちは、一管区の内政上の行為について他の者による批判的見解の表明と、管区の自律との間の微妙なバランスを認めるものである。)私たちは、次の点も極めて明確に表明したい。特定な人間の行動の評価と検討を行う中で、私たちは、確固として、同性愛者への牧会的支援と配慮を継続する決意であること。たまたまその愛情が同性の人々に向かうよう秩序づけられている人間が、犠牲となったり軽視されたりすることが決してあってはならない。私たちは、同性愛者の人々に、その人々は神の子であり、神によって愛され大切にされ、私たちの牧会と友情の最良のものを受ける資格のある人々であることを保証する。(注7.「ウィンザー・レポート」146項を見よ。)
7. 私たちは、私たちのコミュニオンの相互の営みに道筋をつけるものとして、「ウィンザー・レポート」の全般的方向を歓迎し、私たちの間で明らかになってきた見解の相違を扱う上で、以下のような諸結論を支持したい。
8. 私たちは、「ウィンザー・レポート」はそのセクションAとセクションBにおいてアングリカン・コミュニオンの営みの真正な表明を示しているし、またその営みが律せられ保持される上での諸原則を示しているものと考える。このセクションで述べられていることの様々な要素は、今現に私たちが体験していることというより、何が理想であるかという姿を示しているのであるが、私たちが、キリストに忠実に従う者であろうとする時に、セクションAとセクションBに述べられていることを、今後アングリカン・コミュニオンがたどるべき姿への道筋として、これを受け入れていきたい。この二つのセクションは、聖書の権威に服するという聖公会の中心的立場、38の管区間の相互依存のバランスをとる中での「コミュニオン内における自律性」、さらに、それら管区が正当な自律性を有していることについて述べている。従って私たちは、このレポートのセクションに述べられている意味でのアングリカン・コミュニオンの相互依存的営みに、全ての管区が充分に従おうとするのかどうかを、検討してほしいと要請する。
9. 私たちは、一致の装置(Instruments of Unity)の今後の在り方のためのセクションCにある諸提案を歓迎する。(注8.「ウィンザー・レポート」第105項から第107項。)ただし、提案されている聖公会誓約の中味とその実際的運用について重大な疑義が出されているということは、これは長期にわたる検討を要するということをここに認めるものである。(注9.「ウィンザー・レポート」第113項から第120項。)私たちは、諸聖公会がそのエキュメニカル・パートナーとすでに広範囲にわたる誓約を結んでいること、そしてコミュニオンの内部でも、シカゴ・ランベス四綱領がひとつの誓約として充分に機能していることを確認できたことを喜びとするものである。その誓約では、聖書への基本的姿勢、ニケヤ信経、福音の二つのサクラメントと歴史的主教制が確認されている。従って私たちは、この提案を、今から2008年のランベス会議までの間に、コミュニオンの各管区においての検討課題とするよう勧告する。それに加えて、カンタベリー大主教にこの検討過程が実施できるようその方策を考えるよう求めたい。
10. 私たちは、カンタベリー大主教の役割の今後の在り方、また大主教諮問委員会(Council of Advice)の今後の在り方に疑問を持っている。(注10.「ウィンザー・レポート」第108項から112頁。)私たちは、カンタベリー大主教がコミュニオンの直面する諸問題について、同格の者の中の首位者(primus inter pares)として発言する者という責務を歓迎するけれども、私たちの管区の適正な自律性に優先しかねない国際的統治権を意味するような今後の在り方については慎重でありたい。私たちは、これらの諸問題をさらに協議する方策をカンタベリー大主教に求めたい。
11. 私たちは、「ウィンザー・レポート」セクションDに、聖公会政体における主教の普遍的務めについて述べられている原則を受け入れる。(注11.「ウィンザー・レポート」第124項から132項)主教の選出と承認により広い公式な協議の過程を設けようとすると、大変大きな実際的な問題が生じてくるけれども、私たちは、各管区が主教選出と承認の過程に、相互依存の原理をどのように働かせることができるか、その適当な在り方を見出すよう要請する。
12. 私たちは、北アメリカで生じた状況に対して、一体となって最大の注意を払って対処してゆく所存である。北アメリカの諸教会が、コミュニオンの他の地域で一般的に受け入れられている性のモラルと同じ教えを進んで受け入れることになるのかどうかが、依然として重大な問題として残っているが、聖なる三位一体の神にある私たちのコミュニオンの本来の真実さが曖味にされ、また私たちの共通の宣教が深刻に妨げられていることは確かである。
13. しかしながら、私たちは、「ウィンザー・レポート」の諸提言が適切に理解されるために、アメリカ聖公会とカナダ聖公会には、それぞれの法規上の手順に合わせて、これらの諸提言が検討されるよう充分な時間が与えられて然るべきであるということにも同意した。
14. 「ウィンザー・レポート」の中で論じられている諸問題の範囲内で、また、すべての関係者の誠実さを認めるためにも、私たちは、アメリカ聖公会とカナダ聖公会が、次のランベス会議開催に至るまでの期間、自発的に、全聖公会協議会(ACC)の構成員(member)を辞退する(withdraw)することを要請する。私たちはまた、同じ期間内に、「ウィンザー・レポート」の中で、特に両教会に対して向けられている疑問に対して、すなわち、アングリカン・コミュニオンの中での自身の立場について考えるよう、適当な法規上の機関の議を経て、応答するよう要請する。(第8項を参照せよ)
15. 自分たちの主教との間で、あるいは管区とその一教区との間で重大な神学論争の渦中にあるグループの誠実さと正当な要求を守るために、カンタベリー大主教は、緊急に、2003年10月の首座主教声明の線上で、どの教会であれ、そのような人々に牧会が適切に行われるよう監督できる相談機関(panel of reference)を指名するよう要請する。私たちは同様にこの期間、お互いの管轄区域を超えて干渉したり、また干渉し始めないように勧めることを約束する。(注12.「私たちは、関係管区が主教の牧会が、分離しようとしている少数者に対しても適切に為されるよう、カンタベリー大主教と協議の上、それぞれの牧会の地域内で対処できるよう、首座主教たちを代表して要請する。」
16. この声明の第14項に述べられた要請にもかかわらず、私たちは、2005年6月にイギリス、ノッティンガムで開催されるACC会議において、アメリカ聖公会、カナダ聖公会の代表がそのことのために招かれて公聴会が行われることを望む。それは、「ウィンザー・レポート」第141項に従って、これら管区が最近の行動を取るに至った考えを発表する機会となるだろう。
17. 現在のアングリカン・コミュニオンの立場として、1998年のランベス会議決議1.10を再確認するとともに、その決議全てを充分に履行することを新たに決意し、2005年6月のACC会議において、ACCが、1998年のランベス会議ばかりでなくそれ以前にも決議している、声を聞き、研究するという過程を積極的に進めるよう要請する。
18. 当面、私たちは、同性間婚姻の祝福式とキリスト教聖婚式には該当しない性的関係にある人を主教に按手することについて、モラトリアムを実施するよう、各首座主教が兄弟姉妹を説得する上で最大限の影響力を行使するよう求める。
19. これらの方策は、コミュニオン全体に愛の絆の信頼を回復しようとするのがその意図である。
20. 私たちの会議の後半は、ここ数年協議題目となっていた実際的なミニストリーに関するいくつかの問題を取り上げることとなった。私たちは、アフリカの諸教会のミニストリー、特にHIV / AIDSとともに歩む人々、─ 死にゆく人、家族を失った人、孤児たち ─ へのミニストリーについて報告を受けた。これは、全教会が直面している重大な課題であると認識した。けれども、今や私たちの関心は、結核、マラリアの犠牲者にも拡大されなければならない。今年だけで、300万人がエイズで、200万人が結核で、マラリアで100万人が死亡するということである。私たちは、国連のアナン事務総長と世界の指導者たちが二千年期開発目標(MDGs)を2015年までに達成するための有効な方策が実施されるよう支援することを求められている。(注13.これらの二千年期開発目標(MDGs)は次によりアクセス可能。http://www.developmentgoals.org)HIV / AIDS、結核、マラリアとの闘いに加えて、これらのMDGsは、2015年までに絶対貧困層の半減と飢餓の半減をもうたっている。長期的にはその両方を無くさなくてはならない。その他のMDGsは、幼児死亡率の減少化、妊婦の健康増進、初等教育の普及、清潔な飲料水の確保、豊かなものと貧しいものとの間の持続可能なパートナーシップを含むものである。私たちのコミュニオンのすべての管区で、神の民である私たちが、国の指導者たちにこれらの目標を目指すことを促すよう、呼びかける。そして2015年までにMDGsを達成する決意を強めるよう祈ることを呼びかける。
21. 私たちの会議は二つのセッションを費して、次の点を論じた。すなわち、神学的真実を見分けること、コミュニオンのすべての資源を分ち合うことによって神学教育を改善、発展させること。カンタベリー大主教は、大主教に在任中に、このことを優先的課題とされるとのことである。2001年のカヌーガにおける首座主教会議で設置されることになったTEAC(アングリカン・コミュニオンの神学教育)の働きを見直した。それには、4つの異なった対象グループを定め、それぞれが特別な教育と訓練プログラムを、主教のため、司祭と執事のため、終身執事・カテキスト・認証されたレイ・リーダーのため、そして一般信徒のためのものを検討している。これらすべての対象に関して、神学教育における聖公会の特質というものに注意が向けられている。コミュニオン全体をとおして、いくつかの神学教育では特に聖公会の歴史・原則そして霊性をさらに加味する必要があるため、このような注意は意味がある。「聖公会的な在り方」の特質と定義がひとつひとつの対象グループで意図的に追求されている。本年後半に、神学教育担当者の協議会がカンタベリーで行われることが計画されているし、この働きは、2008年ランベス会議での重要な協議題目とされる見込みである。
22. 以上のような企画と並んで、最近の津波被害に対する緊密で実際的な協力などは、アングリカン・コミュニオンの成員である諸管区が働きを分ち合うことの大切さを私たちに確信させるものである。私たちの会合が進行する中で、このことがイエスご自身がこの世が信じるようになるために弟子たちがひとつとなるように祈っておられるように(ヨハネ17:21)、キリスト者の一致とキリスト者の宣教が分ち難いことであることに、私たちがさらに意識するようになった。だからこそ、私たちは、この問題に満ちた世界の変革の中で、神の民すべてと分ち合っているアングリカン・コミュニオンの宣教の業に私たちが邁進しつつ、神の一致と平安の祝福が変らず与えられるように祈るものである。

「あなたがたはこの世に倣ってはなりません。むしろ、心を新たにして自分を変えていただき、何が神の御心であるか、何が善いことで、神に喜ばれ、また完全なことであるかをわきまえるようになりなさい。」
(ローマの信徒への手紙12:2)

「これらはすべて神から出ることであって、神は、キリストを通してわたしたちを御自分と和解させ、また、和解のために奉仕する任務をわたしたちにお授けになりました。」(コリントの信徒への手紙U 5:18)



管区事務所だより Mar. 05