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■管区事務所だより第203号もくじ■

Page1 □平和を考える出発点 □「ハンセン病問題啓発の日」の祈り □重債務国開発協力資金の使途について
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管区事務所だより
2006年1月25日 第203号
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平和を考える出発点
 「ハンセン病問題啓発の日」の祈り
重債務国開発協力資金の使途について

「平和」を考える出発点
  ── フネ(船)とヒロシマ(広島) ──

管区事務所総主事 司祭 ローレンス 三鍋 裕
   また同じようなことを書いて申し訳ないのですが、「船」と「広島」から始めさせていただきます。「平和」を考えるときに、それぞれが違う出発点を持っているのでしょうか。日韓の歴史から考え始める人もおられれば、経済のいびつさを考えるのにフィリピンから考え始めたり、人権を考えるのに障がいの問題から始められる人もおられましょう。わたしはどうやら、「船」と「広島」のようなのです。

 1月19日にちょっと時間を作って「戦没した船と海員の資料館」を訪ねました。神戸の海岸通にある小さな資料館です。写真ばかりが多い資料館ですが、それでも悲しくしかし力強いメッセージを発信しています。学童疎開船対馬丸の展示もありました。「6,754総トン 1944年8月22日 北緯29度33分、東経129度30分(トカラ列島悪石島北西12km付近) 米潜水艦SS?287 Bowfinの雷撃により沈没。(中略)戦没者:疎開学童682名、一般疎開者802名、船砲隊員21名、船員24名、計1,529名。」この数字だけで大きな悲しみの情景が想像されるのです。

 「もともと平和の士である商船の乗組員が、軍に強制徴用され無念の死に至った悲惨な歴史」「苛烈な武器なき戦いを強いられ、その尊い生命を蒼海深く沈め、ふたたび還ることはありませんでした」。『海の墓標』という文の一部を引用すると「自分の船を失った船員は遭難船員と呼ばれた。まるで自分の責任で登山やスキーに出かけた人のように。救助してくれたのが軍艦だと、彼らは居住区には入れてもらえず、甲板上の物陰に毛布を敷いて寝たという」。水や食料にも差別があったらしい。そうなれば「商船乗りは 日章旗のもとでは死するとも 軍艦旗のもとでは死さず」という一般市民としての誇りだって出てくるようです。色々なお考えがあるのは承知していますが、ここでは日の丸は非戦闘員の誇りなのです。最近は様子が違いますが、船の名前は何々丸というでしょう。これが軍艦に改造されると「丸」を取って別な名前が付けられたのです。ですから軍艦には「丸」がつかないそうです。日の丸を強制するのはいかがかと思いますが、ある状況では平和と、そして悲しみのシンボルであったのも事実でしょう。

 その日に広島に移りました。外キ協全国大会のためです。正式には「外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会」だそうです。自分たちの間だけでしか通用しない言葉では、広がりにくくないかと思うのですが。「外登法」も「外国人登録法」の略でしょうか。自分の怠慢といえばそれまでですが、初めての人間には難しいこともありました。

 広島が会場ですから、在外被爆者と在内(日本)被害者の差別の問題も語られました。被爆直後でさえ「お前は朝鮮人か」といって薬すら塗ってもらえなかった人もいた。強制連行しておきながら、帰国したら被爆者健康手帳は失効、被爆者健康管理手当などの支給も停止。今は改善された面が多いが、要は戦後責任を認めたがらない国との戦いであった。別のことですが、根が同じと思われるのがハンセン病元患者の補償問題ですね。幸い今日(24日)のニュースでは「ハンセン病元患者、韓・台431人全員救済へ」となっています。救済という言葉が適切かどうかは別にして、韓国・台湾の療養所の元患者も日本統治時代の強制隔離政策の犠牲者だとやっと認めたわけです。指紋押捺のことも語られました。テロ対策としての指紋管理が強化される可能性があります。テロ対策といわれれば聞こえは良いですが、外国人は怪しいからという理由なら失礼な話です。わたしも外国では外国人でしたし。

 難しい言葉を使わずに話してくれた人がおられました。「若い人の中には、日本がかってアジアを侵略したことさえも知らない人が増えている。アジアの若者はよく知っている。これでは一緒に明るい未来を築こうといっても意味がない。単に過去を知るだけではなく、どのように責任を継承していくのかが語られなければならない」。重い言葉でした。

 広島は被害者であるとともに侵略基地でもありました。日清戦争の時には大本営がありましたし、軍都であり続けました。陸軍船舶司令部がありました。宇品港(広島港)から兵員や軍事物資を運び出したのが船舶司令部でした。わたしの父親はその船舶司令部の偉い?嘱託(つまりは一応の民間人)でもあり、被爆者でもありました。軍艦だけではなく、陸軍徴用船、海軍徴用船そして民間徴用船が広島から出ました。冒頭に書きましたが、徴用船とは強制的に軍の仕事をさせられた民間船で、自衛の武器を持ちませんから、多くは還ってきませんでした。でも軍に協力したことは事実であると言えます。外キ協?の宣言文は、それは「廣島」の地が、戦争という軍事的暴力によって、人の生きる場また文化を奪った者と奪われた者、がキリストの平和を求め、共に歩みだす「和解の場」を意味しているからです、と言っています。本当にそうなって欲しいと願います。

神戸の資料館でもらった資料の中から詩を一部だけご紹介します。

有無を言わさず 船と船員を徴用し
終戦後 戦死を知らせるだけの通知
船の遺品も 遺骨も届かず
父や息子と引き裂かれた遺族たち
戦争とは こういうものだ と
その館は無言で 訴えていた
いや 憲法九条を守ってくれ と
訴えていた

新しい1年、わたしも皆さんとともに、わたしの言葉とわたしの毎日で、ご一緒に平和を求めてまいりたいと思います。





2006年2月12日
「ハンセン病問題啓発の日」の祈り

第55(定期)総会決議第30号「ハンセン病問題啓発の日を設け、ハンセン病問題への理解が深まるために祈る件」 毎年顕現後第6主日をハンセン病問題啓発の日とし、その日にはそれに相応しい祈祷を捧げる。顕現後第6主日がない年は大斎節前主日の直前の主日。

慈しみ深い神よ、み子イエス・キリストは重い皮膚病(ことにハンセン病)を患った人びとを癒され社会の中で生きることを、示してくださいました。しかし、ことにハンセン病への偏見と差別のため、完治しているにもかかわらず、今もなお、共に生きる社会が実現できないでいることに痛みを憶えます。どうか、すべての人びとが、この病気の事実、また回復者の現実など、ハンセン病をめぐる問題を理解することによって、み心にかなう社会を建設することできますように。多くの苦しみの中にある人びとの友となり歩まれたみ子、わたしたちの主イエス・キリストによってお願いいたします。アーメン




重債務国開発協力資金の使途について

管区事務所渉外主事 八幡眞也

第52回定期総会(2000年開催)決議に従って日本聖公会として1プロジェクト当り年間100万円、5年間をめどに3プロジェクトの支援をしています。今年度の大斎克己献金の一部もこのためにささげられます。

@ 南アフリカ聖公会ハイベルド教区におけるエイズ撲滅対策活動

南アフリカ聖公会・ハイベルド教区内の農村地域で最大の都市フェルニーの人口25千人の内56%がHIV陽性と判明しています。この状況のもと、親をなくした家庭の数が確実に増加しています。彼らを対象にHIV/AIDSの撲滅(World without HIV/AIDA)を目指して中長期的に教区として取り組んでます。
具体的な方策としては、(1)感染者の治療、(2)感染予防のための若年層の教育、(3)エイズ感染者の収入確保のための対応、(4)感染した子供の教育の継続、(5)治療方法の改善、(6)聖職者や信徒が感染者の心の問題に対応できるための訓練を受ける事、(7)資金提供者や団体の数の拡大、等に取り組んでおり、ハイベルト教区としてこの活動を継続する覚悟です。
支援は2003年に開始しました。

A ウガンダ・ルエロのチオコ病院の現状

チオコ(綴りは Kiwoko)病院はアフリカ・ウガンダ(アフリカ大陸中央部のやや東寄り)のルエロ(Luwero)の僻地に位置する病院で、1988年にアイルランド人の医師によって始められました。貧困のためにHIV/AIDS感染率が非常に高い所です。
設立当初は小規模の診療所でしたが、現在は年間外来患者数が22,000人、入院患者数が6,000人の大規模な病院に成長しました。
HIV/AIDSに感染した子ども達のための医療活動は2001年から2003年までチオコ病院に滞在した北川恵以子医師(注:JOCSから派遣された医師でそれまでは主にカンボジアなどで活動された医師)によって始められました。
この支援は2004年に開始しました。

B ミャンマー聖公会タウングー教区農村指導者育成センター支援

ミャンマーの農村における日常生活改善のために聖公会が取り組みを計画し、西那須のアジア学院で研修を受けたミャンマー聖公会の司祭を中心に始まった農村指導者育成センターの設立と運営を支援するプロジェクトです。
2004年から支援を開始しましたが、計画通り2005年10月にセンターの建物が完成し、タウングー教区主教司式で竣工式が無事行なわれました。2006年から年間2回、15名の研修生を3ヶ月の期間でトレーニングする予定です。



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