キリスト教と大作曲家

バッハ
バッハ マタイ受難曲
シュッツ マタイ受難曲
モーツアルト レクイエム
モーツアルト レクイエム(2)
ハイドン 天地創造
ヘンデル メサイア 
ベートーヴェン 
 ミサ・ソレムニス(荘厳ミサ) 



 当教会信徒で大阪音楽大学名誉教授、梅本俊和先生によるシリーズです。どうぞお楽し
みに。

西洋音楽とキリスト教は全く不可分の関係にあります。音楽の歴史をさかのぼると有史以
前になるでしょう。人類の歴史と同一で原始の人々の祭事に関係してきます。収穫の喜び
や神への感謝は必ず踊りをともなった音楽となっていったのです。旧約の時代もそれは続
き、楽器演奏や賛歌となりました。
 「指揮者のために。八弦の立琴に合わせてダビデの賛歌」(詩篇一二)。エルサレムの神
殿では、「タンバリンと踊りで、音の高いシンバルで、角笛を吹き鳴らして」(詩篇一五○)神
をほめたたえていました。元来、詩篇は"歌う"ものだったのです。それが実際にどんな音
楽だったのかは楽譜のない時代でしたから想像の域を出ないのですが、かなり派手な賑
やかな音がしていたのではないでしょうか。
 新約にも最後の晩餐のあと「そして賛美の歌をうたってからオリーブ山に出かけていっ
た。」(マタイニ六章三○)とありますから、主イエスも弟子達も常に賛美歌を歌っていたの
はたしかでしょう。
その賛美歌が詩篇だったのではないかと言われています。
 そしてその後、私達がはっきりとした形で目にし、聴くことが出来る一番古い音楽がグレ
ゴリオ聖歌なのです。一昨年このグレゴリオ聖歌のCDが癒しの音楽として、世界中で大
変なブームになったのは記憶に新しいところです。また現在迄の西洋音楽の基礎がここに
あることも疑う余地がありません。
 やがてこのグレゴリオ聖歌が土台となってルネッサンス・ポリフォニーの時代になりま
す。十五・六世紀に活躍したジョスカン・デ・プレやパレストリーナやラッソといった名前を耳
にされたことがあるでしょう。実際に歌われた方も多いと思いますが、その美しさは比類が
ありません。
 また、この時代で忘れてならない人はマルチン・ルターです。ルターの宗教改革によって
音楽も必然的に民衆のものとなり、万人祭司の精神で礼拝中にも会衆が讃美歌を歌うよ
うになりました。それ迄の会衆はもっぱら聴き役で、実際の演奏は専門家である合唱隊や
聖職者が受け持っていました。
 私達が最も尊敬する大バッハはこの後に登場します。この大バッハ(ヨハン・セバスティ
アン・バッハ)といえども突然現れたのではなく、何世紀にも及ぶ西洋音楽の流れとキリス
ト教の歴史が土台となって生まれた大作曲家といえます。そしてその後に続くモーツアルト
やベートーヴェン・ロマン派や近代・現代迄のすべての作曲家達に多大な影響を与えまし
た。
 次回からはバッハ以降の作曲家がキリスト教とどんな係わりを持ちつつ名曲を書いたの
かを、毎回一人の作曲家にスポットをあててお話ししたいと思います。 

(参考文献:川端純四郎著「キリスト教音楽の歴史」日本基督教団出版局)



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