「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。」　ヨハネによる福音書1：1
　この冒頭の「初めに」という言葉は、創世記の書き始めを思い出させる。そして、ヨハネによる福音書は、何度も「あった」という存在を表す動詞を繰り返し用いる。実を言うと、ヨハネによる福音書全体にこの存在を表す、英語でいうところのBe動詞がたくさん使われている。イエスさま自身の言葉として記されていることだけを思っても、たとえば「私は羊の門である」をはじめ、命、真理、道、良い羊飼い、といろいろなものにたとえてご自分がこういうものであると語っておられたり、ただ単に「私はある」と存在そのものを強調しておられたりする。そのことに気付いた時、「この世」は目に見える成果、効果、結果を大事にするが、それらを生み出すためには、まず存在が大切にされなければならないと語っているかのように思える。それは、同時に私たちも、どういう者として存在しているのかがとても大切である、と語りかけてくるように思える。これはパウロのたとえばローマの信徒への手紙で使われる、「主イエス・キリストを身にまとって」(ローマ13：14)という考え方に近く、キリストの中にあって、というような在り方がクリスチャンの在り方で、ヨハネによる福音書のイエスさまも17：21で「彼らもわたしたちの内にいるようにしてください」と願ってくださっていることでもある。（司祭　シモン・ペテロ 上田 憲明）