「サムエルは答えた。『お話しください。しもべは聞いております。』」サムエル記上3：10
預言者サムエルが少年の時、祭司のエリのところに預けられていた時に、主なる神は、サムエルに語りかけられた。サムエルが預言者として召命を受ける物語として読まれることが多い。そして、ここでは省略されているが、この後に主なる神さまからサムエルに託された預言は、お世話になった祭司エリに対して、その息子たちが自分たちの立場を悪用して、人々に付け入っているのに、父であるエリが見て見ぬ振りをしていることを糾弾する言葉だった。サムエルの預言者としての初仕事は、とても恐いものだった。お世話になっている恩人の欠点を指摘しなければいけないものだったから。しかし、神さまは単に欠点を指摘するだけでは終わらないことも信じて、そして祭司エリや息子たちが変わってくれるかもしれないことを信じて、それを告げることになる。祭司エリは、自分が批判される内容になるかもしれないのに、むしろサムエルにしっかり、はっきりと告げることを促す物語が続いていて、神さまの働きかけがあって、さらに人々の関わり合いの中で、預言者サムエルは成長していったことがうかがわれる内容になっている。（司祭　シモン・ペテロ上田憲明）