「弟子たちは急いで辺りを見回したが、もはや誰も見えず、イエスだけが彼らと一緒におられた。」マルコによる福音書9：8
3人の弟子たちが神さまからの声と思われる「これは私の愛する子。これに聞け。」を聞いた後、そこにおられたのは、神々しく姿の変わったイエスさまでもなく、モーセもエリヤもいなくなって、いつもの見慣れたイエスさまだけだったことがわざわざ記されている。イエスさまが神さまから与えられる栄光にふさわしい方であることを3人の弟子たちは、垣間見たのだが、この後イエスさまに起こる出来事によって、イエスさまはみすぼらしく、悲惨な姿にされて十字架に架けられていく。そのことは、この出来事の前に、イエスさま自身が述べておられる。「彼らの目の前でイエスの姿が変わり、衣は真っ白に輝いた」そのイエスさまの姿は、後に弟子たちに示される復活されたイエスさまの姿と似たものだったのであろう。だから、9節に「人の子が死者の中から復活するまで」という言葉が語られているのかもしれない。しかし、この聖書箇所でわたしたちに語られているのは、神さまからの声が「これに聞け」と指し示されたのは、いつもの姿のイエスさまであったということであろう。（司祭　シモン・ペテロ 上田憲明）