聖路加国際大学 聖ルカ礼拝堂

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2024年4月21日 復活節第4主日(2024/04/23)

チャプレン ヨナ 成 成鍾(ソン・ソンジョン)司祭

「 羊に求められる一つのこと 」 ヨハネ10:11-16

 『羊飼いが読んだ詩23篇(A Shepherd Looks at Psalm 23)』という本があります。科学者でもあるフィリップ・ケラー(Phillip Keller)が8年間の羊飼いの生活の間、詩23篇を黙想して、その結果をまとめたものです。本によれば、羊は我が強くて習慣を変えない保守性が強い動物であるため、土が荒れるほど同じ場所に留まる傾向があるそうです。それで飼い主が移動させないと、その場所の草は根までも無くなり、積まれる羊の汚物によって土が汚染され、結果、羊の命までも危なくなることもあります。それゆえ、羊には必ず導いてあげる羊飼いが必要になります。羊飼いが羊を新しい草原へ導くことによって、羊は健康に育てられ、土も生命力を保つようになるのです。もちろん羊飼いには、狼のような獣から羊を守ることも大事な仕事ですので、訓練された牧羊犬を飼って、羊たちの移動と保護のために働かせます。羊にとって羊飼いは無くてはならない大切な存在なのです。
 
 今日の福音書の中で、キリストは、「私は良い羊飼いである。良い羊飼いは羊のために命を捨てる。」(11) と語ることによって、私たち人間にとってキリストがどのような存在なのかについて伝えておられます。羊にとって羊飼いが無くてはならない存在であるように、私たちにもキリストは無くてはならない存在であり、さらにキリストは良い羊飼いであるから私たちのために命までも惜しまず捨てるお方である、というお話です。
 
 それでは、羊飼いに喩えられるキリストに対し、羊に喩えられる私たちには、自分の心身の養いと魂の成長のために何が求められているのでしょうか。今日の福音書の前後の教えに準じますと、それは「羊飼いでおられる神様のみ声を聞き分ける。」(16、3-4)、つまり羊飼いについて知る、ということです。誰が真の羊飼いであるのかを知り、何が真の羊飼いのみ声なのかということを、羊自らが識別して自分のものにしなくてはなりません。そうすることによってのみ、真の牧者についていきながら、絶えず私たちの命を狙っている猛獣に象徴される、例えば心配、恐れ、憎しみなどの心理的な猛獣、また中毒、偏見、争いのような社会的な猛獣から保護していただくことも、さらに心身の養いも、魂の成長も、もたらされるようになるのです。
 
 いかがでしょうか。皆さんは真の牧者でおられる神様の声に耳を傾けているのでしょうか。私たちを命へと導く神様の声について聞き分けているのでしょうか。もしかすると私たちを死に追いやる声に誘惑されているのではないでしょうか。こういうことが問われますと、神様のみ声を聞くことが何を意味するのかよく分からないと思われる方もいるかもしれませんが、この際、一度じっくりと考えてみてください。深く考えることを黙想という言葉で表現することもありますが、それ自体がみ声を識別する一つの通路にもなると思います。いつも良い羊飼いのみ声を聞き分けようとしている皆さんに、神様の恵みが豊かにありますように祈ります。

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