「　AI時代の聖霊　」

現代の知識世界を先導しているユヴァル・ハラリ(Yuval Noah Harari)は、最近の著書『Nexus（ネクサス）』の中で次のように語りました。「AIの認知能力が人間を超えるとしても、共感・創意性・倫理的な判断、そして人間同士の誠実な関係のような部分は、変わらず人間の固有領域として残る。だからこそAI時代には単純な技術の進歩を超えて、人間とはどういう存在なのか、何を信じて、どのように生きるべきなのかについての根本的な省察が求められる。私たちはAI時代の中で受動的な観察者ではなく、能動的な設計者にならなくてはならない。」この話によると、AI時代だからこそ私たちにすでに与えられている共感力や創意性、人間同士や人間と神様との関係性など、目には見えないけれども確かにある領域に注目し、意識的に養う必要があります。これは聖霊、また聖霊を通して私たちに与えられた能力とも深く関係している話でもあります。このような理解に基づいて、私たちに内在されている聖霊のことを再確認するための材料として、IQという言葉で広く知られている知能指数をはじめとする、いくつかの知能に関する指標を取り上げられます。

一つ目は「知能指数」を指すIQ(Intelligence Quotient)です。IQとは言語・数学・論理・空間把握能力などの知性が、どのくらいあるのかについての指標です。IQは生まれ持った頭の良さの特徴が強いですが、今の時代においてIQの領域はすでにロボットなどAIに渡されてしまいました。つまり、人間はIQではAIの相手ではなくなっているのです。それゆえ、IQだけで判断する人間の知能についての定義は変わらざるを得ないと思います。二つ目は「感情的知能指数」を指すEQ(Emotional Intelligence Quotient)です。自分と他人の感情を正確に把握しては、自分の感情をコントロールしてうまく表現し、また他人の感情を理解して反応する能力です。それゆえ、共感・沈黙・リズム・タイミングを司る能力もEQの領域にあります。三つ目は「社会的知能指数」を指すSQ(Social Intelligence Quotient)です。社会的な脈絡を把握し、人間関係における良好バランスについて理解し、人々の関係を維持し構築していく能力です。いわば、私たちが社会で共に生きるための知能として対人関係のスキルとも言えます。四つ目は「愛指数」を指すLQ(Love Quotient)です。人間の存在意義を求める知能についての指標だとも言える愛指数は、見返りや目的なしで何かを提供する心、たとえ理解できなくても信頼する姿勢、うまく説明できなくても見守る感情、また損することがあっても続ける配慮などに関する能力です。愛が計算できるものでないように、LQはAIには求められない人間固有の知能だと言えます。

以上の知能指数は先天的な部分も後天的な部分もありますが、これらは全て聖霊と直間接的な関りがあります。つまり、私たち一人ひとりには、神様によって生きる力としてすでに与えられている部分も、また私たちを支えてくださる聖霊の働きによって養われる部分もあるのです。どちらにしても聖霊は、人間の世界とかけ離れている幽霊のような存在ではなく、むしろ私たちの内外にて共におられて、心も体も魂も支え、思いも行いも助けながら、一人ひとりを真理そのものである神様へと導いてくださるのです。そういう意味で、聖霊そのものこそAI時代に最も求められる知能だとも言えるかもしれません。かつて使徒聖パウロは、命の根源となるその聖霊の働きと助けによって、私たちは生活の場において以下の具体的な実を結ぶようになるという言葉を残しました。ガラテヤの信徒への手紙5章22‐23節ですが、「霊の結ぶ実は、愛、喜び、平和、寛容、親切、善意、誠実、柔和、節制です。」聖霊と共に一つ一つ実っていく私たちでありますようにお祈りいたします。


＜ヨハネ福音書20：19-23＞


19その日、すなわち週の初めの日の夕方、弟子たちはユダヤ人を恐れて、自分たちのいる家の戸に鍵をかけていた。そこへ、イエスが来て真ん中に立ち、「あなたがたに平和があるように」と言われた。 20そう言って、手とわき腹とをお見せになった。弟子たちは、主を見て喜んだ。 21イエスは重ねて言われた。「あなたがたに平和があるように。父がわたしをお遣わしになったように、わたしもあなたがたを遣わす。」 22そう言ってから、彼らに息を吹きかけて言われた。「聖霊を受けなさい。 23だれの罪でも、あなたがたが赦せば、その罪は赦される。だれの罪でも、あなたがたが赦さなければ、赦されないまま残る。」