聖路加国際大学 聖ルカ礼拝堂

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2026年7月12日(聖霊降臨後第7主日)(2026/07/16)

「 心配 」

聖書の舞台であるイスラエル地域は砂漠気候なので土の質が良くありません。砂や岩石が多く、植物の生育も厳しい土壌です。それで1948年にイスラエルが建国を宣言した後、イスラエルの人々は祖国の土を改良するため旅行の際に旅先の土を隠して持って帰り、国がそれを集めて研究をしました。その結果、イスラエルは改良された土で肥沃な農耕地を造り上げ、今では高い食料自給率を実現した農業先進国になっています。人類の農業の歴史からも学べますように、良い土とは与えられるだけではなく作っていくものでもあります。そのような土の特徴になぞらえて人の心についての理解も深めることができます。土と同じように人の心という土壌も様々ですが、今日の福音書でキリストはみ言葉という同じ種が蒔かれても心の状態によって実りが違ってくると語られました。まるで「道端のように固い土」・「石だらけの土」・「茨の多い土」・「良い土」のように、それぞれ心という土壌の状態によって実り方も変わるのです。

例えば、「茨の多い土」のような状態の心に種が蒔かれた場合には、種が芽を出したとしても茨の陰に覆われて伸びられず、やがて枯れてしまいます。茨は生命力が強くて水が少ないところでも生き残られるし一晩の間に大きく伸びる植物です。茨のように私たちの心と魂を覆って苦しめるものは誰の中にもあります。色々ありますが代表的なものとして心配という心理状態を挙げることができます。心配はこの世についての思い煩いの結果ですが、心配が大きくなりますと不安や恐れに変わってしまうこともあります。多くの人は、たとえ神様を信じているとしても沢山の心配の中で生きる傾向があります。結婚・出産・子育における心配から、家庭・職場・人間関係・老後・死、ましてや死んだ後についての心配まで様々な心配の中に生きています。場合によって心配は不安や恐れに転じてしまうこともあり、そのように心配が茨のように大きく伸びると、いただいたみ言葉が覆われて心と魂が枯れていることを感じることもあるのです。

ところが、私たちを苦しめている心配の殆どは、実は自らが作り出しているものだそうです。スローライフ(slow life)の提唱者の作家アーニー・ゼリンスキー(Ernie J. Zelinski)は大学の心理学研修(例えば、Penn State Worry Questionnaireなど)を土台に、心配の96%はあまり意味のないものだと語りました。具体的には、心配の中で40%は絶対に現実には起こらないことで、30%は過去にすでに起こったことへの執着で、22%は天候に合わせる服選びのように極めて小さなことで、4%は突然の災害や事故など人間の力ではどうすることもできないことであって、実際に4%だけが自分の力で変えられること、例えば健康や経済的な安定などに関する心配だそうです。そのように心配というのは心から出てきて伸びやすいものではありますが、実際にはそのほとんどがどこにも使い道のない、つまり焚き火の焚き付けとしても使えない茨のようなものなのです。しかもその心配が、過ぎ去った過去やまだ来ていない未来についてのものならば尚更のことです。

21世紀の聖人と呼ばれるマザー・テレサ(Mother Teresa、1910‐1997)は“昨日は過ぎ去って、明日は私の能力の範囲外にあり、今日だけが私の前にある。今日のこの瞬間だけが神様に捧げられる。”という言葉を残しました。彼女が語りましたように、私たちには今という時が恵みの時として与えられています。過去は変えられないもので、未来は神様と共に来るものです。それゆえ過去のことは神様に委ね、未来のことは神様に任せて、与えられた今現在に最善を尽くすことが心の土壌を豊かにする秘訣なのです。何事にしても急激に変わっていく時代の状況に伴い色々心配事が多くなりますが、こういう時であるからこそ、永遠なる今である神様に祈りながら、目の前にある今に忠実に向き合いましょう。


<福音書> マタイによる福音書 13章1~9節、18~23節

1その日、イエスは家を出て、湖のほとりに座っておられた。 2すると、大勢の群衆がそばに集まって来たので、イエスは舟に乗って腰を下ろされた。群衆は皆岸辺に立っていた。 3イエスはたとえを用いて彼らに多くのことを語られた。「種を蒔く人が種蒔きに出て行った。 4蒔いている間に、ある種は道端に落ち、鳥が来て食べてしまった。 5ほかの種は、石だらけで土の少ない所に落ち、そこは土が浅いのですぐ芽を出した。 6しかし、日が昇ると焼けて、根がないために枯れてしまった。 7ほかの種は茨の間に落ち、茨が伸びてそれをふさいでしまった。 8ところが、ほかの種は、良い土地に落ち、実を結んで、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍にもなった。 9耳のある者は聞きなさい。」

18「だから、種を蒔く人のたとえを聞きなさい。 19だれでも御国の言葉を聞いて悟らなければ、悪い者が来て、心の中に蒔かれたものを奪い取る。道端に蒔かれたものとは、こういう人である。 20石だらけの所に蒔かれたものとは、御言葉を聞いて、すぐ喜んで受け入れるが、 21自分には根がないので、しばらくは続いても、御言葉のために艱難や迫害が起こると、すぐにつまずいてしまう人である。 22茨の中に蒔かれたものとは、御言葉を聞くが、世の思い煩いや富の誘惑が御言葉を覆いふさいで、実らない人である。 23良い土地に蒔かれたものとは、御言葉を聞いて悟る人であり、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍の実を結ぶのである。」




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