聖路加国際大学 聖ルカ礼拝堂

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2026年10月11日(聖霊降臨後第20主日)(2026/10/14)

「礼服 」 

日本の慣習では結婚式に出席するとき、新郎新婦を祝うのに相応しい服装、つまり礼服を着て臨みます。ことに花嫁の友人の場合は、花嫁とのバランスを考えながら礼服を選ぶこともあります。参列者の礼服によって結婚式は新郎新婦を祝うひと時であるという雰囲気に包まれます。礼服を着ることは、時代と文化を超えて重んじられてきた人類の共通理解です。今日の福音書にも礼服が物語の重要なキーワードとなっています。ある王が王子の結婚の祝宴を催し、善人悪人を問わず多くの人を招きました。ところがその中の一人が王の用意しておいた礼服を着ていなかったので、祝宴の場から追い出されました。物語の中、祝宴は神の国を、礼服は救いをそれぞれ象徴するのですが、礼服を着ていなかった人は救われることなく神の国から追い出されたということを意味します。怖くも感じられる物語ですが、これは今日の私たちにもすでに備えられている礼服を拒まずに身に着けることで救いを得るように、と教えています。ではどのようにすれば私たちは救いをもたらす礼服を身に着けることができるようになるのでしょうか。それについての具体的なヒントを与えてくれるお話がありますので紹介いたします。

スウェーデンの絵本作家エルサ・ベスコフ(Elsa Beskow、1874-1953)の『ペレの新しい服(Pelles nya kläder、1912年)』という絵本ですが、次のような内容です。大きくなったペレは子羊の毛を刈り、近所の人々の協力を得ながら自分の新しい服を仕立てることにします。先ず子羊の毛を刈って、それを近所のおばあさんに梳いてもらいに行きます。その代わりに畑の草取りをします。今度は別の人の所に行って、梳いた毛を紡いでもらいます。その代わりに牛の面倒をみます。その後は、紡いだ糸を染めるために、ペンキ屋さんにお願いして染め粉を分けてもらいます。その代わりにお使いに行きます。そしてその糸を母親に織ってもらう代わりに赤ちゃんの面倒をみます。こうして出来た布を仕立屋さんに持って行き、そこでも仕立屋さんの代わりに働きます。そういう過程を経て土曜日の夜、少年ペレはようやく新しい服を手に入れることになります。ペレは日曜日の朝、出来上がった青い服を着て、毛をくれた子羊のところに行きます。そして“新しい服をありがとう”と言いました。

この絵本の物語は、キリスト教の観点を借りますと以下のように読むこともできます。私たちに見立てることができる主人公のペレは、古くからキリストを象徴する子羊から毛をもらって、多くの人の協力を得ながら懸命に働いて新しい礼服を作り上げ、日曜日にそれを着て神様に感謝の礼拝を捧げたということです。これによりますと、救いを象徴する礼服は最初から完全な形で与えられていたのではありません。子羊に象徴されるキリストから救いの原料だと言える毛が手に入ったとしても、それだけで救いが得られたとは言えないので、人々の助けをもらい協力することによって、ようやく救いをもたらす礼服が完成するのです。

人間として私たちは、いろいろな限界を持つ弱い存在です。そのような私たちにとって救いとは、最初から完全な形で与えられるよりは、少しずつ形成されていくものに近いです。神の国に入るのに相応しい礼服としての救いは、今も少しずつ形成されていく現在進行形なのです。そういった意味では絵本の主人公ペレから学ぶことが多くあります。ペレは、子羊から新しい服に必要な毛をもらって、人々の協力を得ながら、子羊の毛を梳き・紡ぎ・織り・染め・仕立てる過程を踏んで、ようやく新しい服を作り上げました。そのように、礼服としての救いは、自分の力だけではなく人々の力を得ながら、人々と助け合いながら、躓くことがあっても諦めずに少しずつ丁寧に整えていくことだと言えます。それは宗教の枠を超えて、自由・解放・真理・愛・慈しみなどもその延長線上で理解することができます。


<福音書> マタイによる福音書 22章1~14節

1イエスは、また、たとえを用いて語られた。 2「天の国は、ある王が王子のために婚宴を催したのに似ている。 3王は家来たちを送り、婚宴に招いておいた人々を呼ばせたが、来ようとしなかった。 4そこでまた、次のように言って、別の家来たちを使いに出した。『招いておいた人々にこう言いなさい。「食事の用意が整いました。牛や肥えた家畜を屠って、すっかり用意ができています。さあ、婚宴においでください。」』 5しかし、人々はそれを無視し、一人は畑に、一人は商売に出かけ、 6また、他の人々は王の家来たちを捕まえて乱暴し、殺してしまった。 7そこで、王は怒り、軍隊を送って、この人殺しどもを滅ぼし、その町を焼き払った。 8そして、家来たちに言った。『婚宴の用意はできているが、招いておいた人々は、ふさわしくなかった。 9だから、町の大通りに出て、見かけた者はだれでも婚宴に連れて来なさい。』 10そこで、家来たちは通りに出て行き、見かけた人は善人も悪人も皆集めて来たので、婚宴は客でいっぱいになった。 11王が客を見ようと入って来ると、婚礼の礼服を着ていない者が一人いた。 12王は、『友よ、どうして礼服を着ないでここに入って来たのか』と言った。この者が黙っていると、 13王は側近の者たちに言った。『この男の手足を縛って、外の暗闇にほうり出せ。そこで泣きわめいて歯ぎしりするだろう。』 14招かれる人は多いが、選ばれる人は少ない。」

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