聖路加国際大学 聖ルカ礼拝堂

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2026年10月18日(聖霊降臨後第21主日)(2026/10/23)

「ワニの論法 」

古代エジプトンの伝説から生まれた「ワニの論法」(Crocodile paradox)というものがあります。ある日、ナイルの川沿いで遊んでいた子どもが、ワニにさらわれてしまいました。それを知った母親がワニを訪ね、子どもを返してほしいと頼みました。するとワニは“わしが返すと思うか、返さないと思うか。正しい答えを出せば返してやる。”と言いました。もちろん子どもを返すつもりがかったワニは、どちらの答えに対しても違うという返事し、子どもを餌食にするつもりでした。ワニが出した問題自体には何の意味もなく、ただ子どもを餌食にするための口実に過ぎなかったのです。今日の福音書にも、ファリサイ派とヘロデ派の人たちがワニの論法のような論理を持って、キリストの言葉尻を捉えて罠にかけるために難しい質問をしました。「皇帝に税金を納めるのは許されているのでしょうか、いないでしょうか」(17)、つまりローマ皇帝への納税はユダヤ教の律法に適っているのかどうかを問いました。するとキリストは、あっさりと「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい」(21)とお答えになりました。

実は、ファリサイ派とヘロデ派は色々な意味で相容れない立場にある人たちでした。ファリサイ派は宗教的なグループでヘロデ派は政治的なグループであったし、ローマ帝国に対しても、ことに納税については相反する立場に立っていたのです。ところが、なんと両者が手を組んで論理的な難問を出してキリストを罠にかけようとしました。彼らの質問に対して、もしキリストがローマ皇帝への納税を認めれば、ファリサイ派が神様に背く者という理由でキリストを追及することができました。またキリストが納税を認めなければ、ヘロデ派がローマ皇帝への反逆者として訴えることができたのです。悪賢くも彼らは政治と宗教的に複雑な状況を利用して、キリストを訴える口実を作ろうとしていたわけです。

こういう状況の中でキリストは「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい。」と答えましたが、その意味を知るためには、皇帝のものと神のものとは何かについて調べる必要があります。まず税金に納める硬貨であるデナリオン銀貨を見ますと、そこには皇帝の像が刻まれているので、それは皇帝のものだと言うことができます。その一方で創世記に「神は御自分にかたどって人を創造された」(1:27)と記されているように、人間には神様の像が刻まれているため、根本的に一人ひとりの命は神様のものだと言えます。それに準じると、キリストは「皇帝の像が刻まれている銀貨は皇帝に返せばよい。しかし、神様の像が刻まれている人間は、神様に帰属するものであり、神様以外の何者にも冒されてはならない」という主旨のことを語られたのではないか、と解釈することができます。

この解釈、ことに「神にものは神に返す」ことに関する部分は、今日の私たちに以下のようなことを問いかけます。それは、何者にも冒されてはならない尊い存在として私たちは、どれほど自分自身を大事にしているのか、そして自分自身が神様に返すべきものとは何かということです。「返す」という表現のイメージが湧かないかもしれないので、少し説明を加えますと、言葉として返すが示しているように、元々は自分のものであるよりは一時的に与かっているものを本来の持ち主である神様にお返しする、ということです。では何がお返しできるのでしょうか。才能・能力・財産・健康・良心・愛情・功績・家族・友人などなど、それがどのようなものだとしても、自分に与えられている何かに執着することなく感謝のうちに使ったり、謙虚な姿勢で関係を維持したり、またそれらを人々のために分かち合うことを通して、神様の心を表すことだと言えます。ではいかがでしょうか、皆さんはその問いにどのように答えるのでしょうか。「ワニの論法」のような論理ゲームの罠に陥ることがないように気を付けながら、ありのままの自分についてゆっくり省察し、未来のことを希望しながら、それらのことについて考えてみましょう。


<福音書> マタイによる福音書 22章15~22節

15それから、ファリサイ派の人々は出て行って、どのようにしてイエスの言葉じりをとらえて、罠にかけようかと相談した。 16そして、その弟子たちをヘロデ派の人々と一緒にイエスのところに遣わして尋ねさせた。「先生、わたしたちは、あなたが真実な方で、真理に基づいて神の道を教え、だれをもはばからない方であることを知っています。人々を分け隔てなさらないからです。 17ところで、どうお思いでしょうか、お教えください。皇帝に税金を納めるのは、律法に適っているでしょうか、適っていないでしょうか。」 18イエスは彼らの悪意に気づいて言われた。「偽善者たち、なぜ、わたしを試そうとするのか。 19税金に納めるお金を見せなさい。」彼らがデナリオン銀貨を持って来ると、 20イエスは、「これは、だれの肖像と銘か」と言われた。 21彼らは、「皇帝のものです」と言った。すると、イエスは言われた。「では、皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい。」 22彼らはこれを聞いて驚き、イエスをその場に残して立ち去った。

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