「イエスは近づき、彼らに手を触れて言われた、『起きなさい。恐れることはない。』彼らが顔を上げて見ると、イエスのほかにはだれもいなかった。」マタイによる福音書17：7-8
イエスさまと一緒に山に登った３人の弟子たちは、びっくりするような出来事に立ち会います。イエスさまの姿が光輝き、モーセとエリヤがイエスさまと親しげにしゃべっているのでした。ペトロの場違いのような提案に対して、神さまからと思われる声が聞こえてきて、弟子たちは恐れに満たされてひれ伏してしまいます。そして、イエスさまは近づいてきて彼らに手を触れられておっしゃるのです。ただ、言葉をかけただけでなく、「彼らに手を触れて」というところに、イエスさまが弟子たちのことを大切にしておられた様子が表れているように思います。また、「起きなさい」という言葉は、死んでいた少女（マルコ5：41）にも、手足が麻痺して動かなくなっていた人（マタイ9：6）にもイエスさまがかけられた言葉で、それは、いやしの言葉であると同時に、復活を思わせる言葉でもあります。そして、弟子たちが「顔を上げて見ると」、よく知っているイエスさまの姿だけが見えてほっとしたことでしょう。そしてそのイエスさまが「恐れることはない」と言っておられる場面を弟子たちはこの後、繰り返し思い起こしては、挫けそうになる場面で再び立ち上がれたのではないかと思います。（司祭　シモン・ペテロ上田憲明）