「人は、パンだけで生きるものではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる」マタイによる福音書４:４
人間の歴史では飢餓に苦しんでいることの方が多かったと思われます。それゆえパン（食べ物）の必要は生存に関わる切実なことと思われます。イエスの時代にはもちろん民衆の多くは飢えていました。イエスはその人々にあろうことに「人はパンだけで生きるものではない」と言い放ったのです。これだけ取ると、わたしたちの常識「衣食足りて礼節を知る」に逆行する難解な言葉かもしれません。さらにイエスは当時の皇帝や王の軍隊に家族や仲間を殺され傷つけられた人に向かって、主の祈りにある「赦し」を度々命じたと思われます。このことを踏まえ、わたしたちは「人は、パンだけで生きるものではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる」というイエスの言葉を、救いの福音として聞きたいのです。切実な生理的な感覚の支配、また骨身に染みる恨みつらみの牢獄から解かれ、他者を愛して生きるにはどうしたらよいのでしょう。悔い改めの季節大斎節に、改めて主イエスの顔を仰ぎ、教えていただく必要があると思うのです。(退職司祭　パウロ　佐々木道人)