聖路加国際大学 聖ルカ礼拝堂

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2024年4月7日 復活節第2主日(2024/04/08)

チャプレン 成 成鍾 司祭 

「再創造の過程」 ヨハネ20:19-31 

 父と子と聖霊のみ名によって、アーメン。

 イースターを迎え、今日は復活後の水曜日でもありますが、皆さんはキリストの復活について、どのような思いを持っているのでしょうか。もしかして、疑い屋さんトマスのように、復活のことが信じ切れない、ある種の疑いを持っているのではないでしょうか。またそのような信仰の弱さのゆえに、いつも心の中から悩んでいるのではないでしょうか。万が一そうであっても、それを思い煩うことは一切ありません。復活されたキリストは、今日の私たちの所にも来られ、私たちをもトマスのように復活を生きる新しい者とならせてくださるからです。
 
 実は、復活されたキリストが、部屋に隠れていた弟子たち(トマスを含む)になさったことは、単なる復活の証明だけではなく、彼らを再創造するための過程だったとも考えられます。弟子たちに現れて、三回も「あなたがたに平和があるように」と祝福の言葉を述べ、息を吹きかけながら「聖霊を受けなさい」と語られたこと、また手とわき腹の傷跡をお見せになられたことは、すべて神様が人間創造の際に用いられたモチーフでもあるのです。つまり復活されたキリストは「聖霊を与える」などの一連の行動を通して、虚脱感と恐怖に覆われて霊的に死んでいた弟子たちを再創造してくださったのです。まさに彼らを「弟子」から「使徒」へ、つまりキリストに従う弟子から、キリストの代わりに生きる使徒へと、改めて生まれ変わらせてくださったのです。

 ことにトマスが、他の弟子たちから「復活したキリストに出会った」という話を聞いた後、自ら信じるようになるまでの一週間のことを考えてみてください。おそらくその一週間は、トマスにとって悩みと葛藤、苦しみと混乱、もどかしさと後悔などが入り混じった大変なひと時だったに違いありません。そのような一週間、つまり七日間の創造の完成に向かう準備過程があったからこそ、トマスはキリストに一切触れることもなく、再創造された者として、あっさりと「わたしの主、わたしの神よ」と告白するようになったのではないか、と推察いたします。

 疑い深いトマスは、信仰の浅い者の代表者ではなく、むしろ信仰を求めている私たちキリスト者の代弁者です。トマスから習えますように、心の中の疑いや疑問点を隠すことなく、勇気を持って語り合い、また徹底的に悩みながらも忍耐強く御心を求めていくことを通して、再創造の恵みに与る私たちになりますように願います。

 最後にライナー・マリア・リルケ( Rainer Maria Rilke, 1875-1926 )の言葉をご紹介することで、お話を終わられていただきます。
“ 私はあなたにお願いしておきたいのです。あなたの心の中の未解決のものすべてに対して、忍耐を持たれることを、まるで閉ざされた部屋のような、非常に未知な言葉で書かれた書物のような、疑問自体を愛してください。今すぐ答えを捜さないで下さい。あなたはまだそれを生きられないから、今与えられることはないのです。すべてを生きる、ということこそ大切なのです。今あなたは、疑問を生きて下さい。そうすれば、おそらくあなたは次第に、それと気づくことなく、答の中に生きていかれることになりましょう。”

父と子と聖霊のみ名によって、アーメン。





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