日本聖公会は、脱原発・反核を大切な宣教課題と位置づけ、様々な取り組みを続けて参りました。

原発問題プロジェクトは、「いっしょに歩こう!プロジェクト」(2011〜2013)、



「原発と放射能に関する特別問題プロジェクト」(2013〜2016)を経て、



2016年に「日本聖公会 正義と平和委員会」に属するプロジェクトとして設置されました。

ごあいさつ

日本聖公会首座主教 主教 ルカ 武藤謙一 

 2011年3月11日に発生した東日本大震災、また福島第一原子力発電所事故による被災者支援のため、日本聖公会は「いっしょに歩こう!プロジェクト」によって被災者支援活動を行ってきましたが、同時に2011年9月の常議員会で「放射能・原子力発電所のもたらす諸問題について、聖公会内外に対して日本聖公会としての姿勢を明確にしていく必要がある」ことを認め、原発事故と放射能に関してのワーキンググループを設置しました。このワーキンググループの活動は、2013年以降は「いっしょに歩こう!パートⅡ」の「原発と放射能に関する特別問題プロジェクト」に引き継がれ、子どもたちとその家族や保育者たちのリフレッシュプログラムなどの原発・放射能による被災者の支援活動、また原発・放射能に関する調査・研究、広報活動を行ってきました。さらに2016年6月からは『「正義と平和委員会」原発問題プロジェクト』と組織を変え、2019年5月には、韓国、フィリピン、台湾、英国、米国からの参加者も得て、仙台市で「原発のない世界を求める国際協議会」を開催しました。その時に出された声明は日本聖公会の多くの教区でも賛同決議がなされ、2020年10月に開催された日本聖公会第65(定期)総会でも賛同決議とともに「原発のない世界を求める週間」の設置が決議されました。

 福島第一原子力発電所事故から10年が経過しましたが、放射能によって汚染された自然と人びとの生活は回復していません。今も日々汚染水が溜まり続けており、政府は地域住民の合意なく海への放出を一方的に決めました。また廃炉への道筋はまったく明確ではありません。この出来事を風化させることなく10年前に何が起こったのか、今も困難のうちにある方々の声に耳を傾け、すべての命を守るために、わたしたちは何をすべきか、自らの信仰の課題、また宣教の課題として真剣に受け止めたいものです。

 このプロジェクトの活動は、原爆による被爆と原発事故による被曝を体験した国に生きる教会として果たすべき大切な課題を担うものであり、経済優先で物質的豊かさや効率の良さを求める在り方を見直し、神様の造られたすべての命を大切にするという神の国の実現に参与するものであると信じます。

(2021年4月30日 記)

正義と平和委員会 委員長 主教 ダビデ・上原榮正

主の平和。 

 国連は、6月5日を世界環境デーとして、地球環境を考える日としています。

 大量消費と、産業を回転させるための絶え間ない大量生産が地球環境に大きく影響を及ぼしています。これは、世界人類の急激な増加に対応するためでもありますが、私たちのあくなき消費願望を満たすためでもあります。

 影響の1つが二酸化炭素・CO2の増加と地球温暖化です。熱帯雨林の伐採、資源獲得のための乱開発、南北両極付近の永久凍土の凍解などが、人間と未開地の 動植物を接近させ、インフルエンザ、エイズ、サーズ、コロナなど、ウイルスとの戦いを余儀なくしています。また温暖化は急な雷雨や巨大な暴風も引き起こしています。原発問題は、その延長にあります。政府はCO2削減のためにも原発が必要だとし、東日本大震災後停止していた原発の運転を再開しました。しかし、東京電力福島第一原子力発所の事故で起きた放射能汚染は未解決のままです。原発は、私たちが 生活に必要なエネルギーをどう確保するか、どう安心、安全に過すかと密接に関わります。日本聖公会では、東日本大震災時に出来た「いっしょに歩こう!プロジュエクト」を発展解消して「原発問題プロジュクト」を誕生させました。地球環境、エネルギー問題、それに関わる人間の生と暮らし、この中に「正義と平和」の問題があります。自身と未来に関わる問題です。共に考えていきましょう。

原発問題プロジェクト 長 司祭 フランシス 長谷川清純

 日本聖公会主教会は東日本大震災1周年の2012年3月11日付、「東日本大震災から1周年を迎えて」を発布し、「東日本大震災は、原子力の平和利用を標榜した原子力発電の安全神話を粉々に打ち砕きました。今後は、原子力に依存するエネルギー政策の転換と、私たちのライフスタイルの転換が強く求められています」と述べ、私たちの日々の生活そのものの変革が目指されました。

 翌年5月に開催された日本聖公会第59(定期)総会は、「原発のない世界を求めて-原子力発電に対する日本聖公会の立場―」を決議し、脱原発・エネルギーシフト指向を鮮明にしました。「私たちは教派・宗教を超えて連帯し、原子力発電所そのものを直ちに撤廃し、国のエネルギー政策を代替エネルギーの利用技術を開発する方向に転換するように求めます。苦しみや困難を抱える人々と痛みを分かち合い、学び合い、愛し合い、支え合って生きる世界を目指します」と。原発問題プロジェクトは、これらの目的の共有化、方針の推進、意向の具現化に取り組んでいます。2012年12月開催の世界教会協議会「原子力に関する宗教者国際会議」で、張允載(ジャンユンジェ)氏は「核から解放される出エジプトの旅」と題した基調講演をしました。「この砂漠(最初に核実験が行われた場所)で“死の遊び”が始まったのです。これを止めて、“いのち”を選ばねばならない。核から解放された世界への出エジプトが、ここから始まらなければならない。……その旅路の先に、私たちは人間性を取り戻せるはずなのですから。長く厳しい旅路となるかもしれません」。私たちは張氏が語るこの出エジプトのイメージ・幻を夢見つつ、被災の地に立ち続け、廃炉も含めての長い旅の途上にいるのです。

東日本大震災以降の日本聖公会の取り組み

2011年3月11日
M9.0の大地震と大津波の発生
2011年3月12日
東京力福島第一原子力発電所事故発生
被災地にある各地の教会に災害対策室が置かれ、信徒の安否確認と緊急支援の動きが始まる。
2011年3月
国内外からお祈りと支援が寄せられ始める。
神戸教区による3ヶ月間の東日本大震災緊急救援活動が始まる。同年6月に終了。
2011年5月
日本聖公会東日本大震災被災者支援「いっしょに歩こう!プロジェクト」開始

原発事故による被災者への支援では、小名浜聖テモテ教会に「小名浜聖テモテ・支援センター」、福島県新地町に「被災者支援センターしんち」を開設。東京電力福島第一原子力発電所の爆発により、故郷を追われ、仮設住宅に住む人々を支援。未曾有の事故によって放射能がまき散らされ、大気汚染、海洋汚染、大地や植物に堆積する汚染が今後どのように拡がっていくのか予想さえできなかった。避難を強いられた人、自主的に避難をした人、さまざまな事情で避難をしない人、できない人。それぞれ違う立場にある人々の思いに、どのように寄り添い、どのように共に歩むのか、模索し続けた。

九州教区の協力による長崎県高島や、仙台市内、新潟県山古志での保養支援「リフレッシュ・プログラム」開始。

2012年3月11日
主教会メッセージ『東日本大震災から1周年を迎えて』を発布
2012年5月23日
日本聖公会 第59(定期)総会
「原発のない世界を求めて-原子力発電に対する日本聖公会の立場-」を決議。
2012年9月
「つきしまキッズデイ」が、東京教区月島聖公会によって立ち上げられ、福島県から自主避難をして来た家族の支援を開始。
2012年9月14日〜17日
日本聖公会 宣教協議会

「いっしょに歩こう!プロジェクトからの報告」として、長谷川清純司祭と越山健蔵司祭より、被災者や被災地の状況、そして様々な支援活動が報告された。この協議会で、「これからも、東日本大震災の被災者に寄り添い、ともに歩み、祈り続けます」と、改めて確認された。

2013年6月
「いっしょに歩こう!プロジェクト」活動終了
「いっしょに歩こう!プロジェクト パートⅡ」へ活動引き継ぎ
「原発と放射能に関する特別問題プロジェクト」開始

リフレッシュプログラムを岐阜県や沖縄県でも開始。福島県内幼稚園の園外保育支援、母親のための放射能から子どもを守るための講座やコンサートなどのイベント、幼稚園の教職員のための保養プログラムなどを実施。仮設住宅に暮らす人々への支援を継続。

  • ニュースレター『命の川』発行(全10号)。
  • 『原発問題についてのQ&A』を日本語、韓国語、英語で発行。
2014年10月23日
日韓聖公会宣教協働30周年記念大会

共同声明にて今後の宣教協働の課題として、以下を決議。
『両聖公会は、世界聖公会の「宣教の5指標(The Five Marks of Mission)」を共有し、そのひとつである「創造秩序の保存と地球生命の回復と維持」のため、原発と放射能(核エネルギー)問題の深刻さを認識し、信仰の課題として取り組む。』

2016年5月
「原発と放射能に関する特別問題プロジェクト」の働きを「正義と平和委員会・原発問題プロジェクト」に移行
  • ニュースレター『いのちの海と空と大地』発行。
2018年4月
ミランダ シュラーズ師講演会開催協力(東京)。
2018年6月5日
日本聖公会 第64(定期)総会

『決議第29号(第28号議案可決)「原発のない世界を求める国際協議会」開催の件』を決議。
原発のない世界を求める国際協議会実行員会を発足。

2019年5月28日~31日
「原発のない世界を求める国際協議会」開催
2020年10月
日本聖公会 第65(定期)総会
日本聖公会「原発のない世界を求める国際協議会」声明に賛同。
「原発のない世界を求める週間」の設置を決議。
2021年5月30日〜6月7日
原発のない世界を求める週間企画 オンラインフォーラム「原発はやめようよ」開催