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生まれつきか?育て方のせいなのか?

生まれつきか?育て方のせいなのか?

Ø  子どもの個性は千差万別

 子どもたちにはそれぞれ個性があって、得意なことや苦手なこと、好きなことや嫌いなことがあります。素直だったり、反抗的だっり、人懐こかったり、恥ずかしがりだったり、人の個性は千差万別といえるでしょう。でも、そういう子どもたちの個性って、実際のところは、どのように出来上がってくるのでしょうか?生まれつき決まっているのでしょうか?それとも、育て方によって大きく変わるものなのでしょうか? 

 

 そんなことは分からないし、どちらでもよいのでは、とお考えの方もいるかもしれません。けれども、これって実は、発達支援を考える時には避けて通ることができない、大切なテーマなのです。

 

Ø  落ち着きのないAくん

 一つ事例を考えてみます。 Aくんは2歳の頃から落ち着きがなくて、お母さんが買い物に連れて行くと、すぐに一人でどこかに行ってしまったり、陳列してある商品に手を出したりしてしまう、活発な男の子でした。3歳になって幼稚園に入ると、元気で明るいAくんには、最初、友達がたくさんできました。ところが、落ち着きのないAくんは、友達が使っているおもちゃを横取りしたり、紙芝居をしているときに急に自分の話を始めたりするものですから、どうしても先生は、Aくんを叱らなくてはいけませんでした。そのうちみんなも、Aくんが「困った子」なのだ、と思うようになりました。だんだんAくんと一緒に遊ぶ子がいなくなりました。Aくんは仲間はずれにされたことに腹を立てて、友達とよく喧嘩をするようになりました。体が大きくて力が強いAくんは、友達に怪我をさせてしまいました。怪我をさせられた子のお母さんは、怒ってAくんのお母さんに言いました。

 「いったい、どういう育て方をしているんですか?」

 

 Aくんのお母さんは、Aくんが少し落ち着きがないところがあっても、明るくて優しい子どもだということを知っていました。でも、友だちに怪我をさせてしまったAくんをかばうことはできません。友だちのお母さんに言われて、「私は息子に甘すぎたのかしら」と思いました。そして、お母さんはAくんを叩いて、叱りました。だんだん、Aくんはお母さんのいうことを聞かなくなり、嘘をつくようになりました。叱られないために一番良い方法は、嘘をつくことだと思うようになったのです。こうなると今度は、

 

 「お母さんがお子さんを叱りすぎです」

 

 という声が聞こえてきそうです。子育てがうまく行かなくなったとき、それは「親の育て方」の問題だ、とする考え方が、まだまだ根強いように思います。

 

Ø  それで結局どっちなの?

 結論は、実際に子育てをしたことのある人なら普通に感じている、当たり前の実感と同じものです。つまり、「生まれつき」も「育て方」も、両方あるのです。

 

 ただ、話しはそんなに単純ではありません。

 

 赤ちゃんの「生まれつきの性質」は、お母さんの「育て方」を変化させてしまうことがあります。たとえば、生まれつき過敏ですぐ泣いてしまう赤ちゃんで、いくらあやしても泣き止んでくれなかったとします。仕舞いにお母さんも疲れてしまって、正直「もうこんな子は可愛くない」、と思うようになるかもしれません。つまり、赤ちゃんの「生まれつき」は、お母さんの「育て方」を変えてしまうかもしれないのです。そしてその「育て方」は、赤ちゃんに発達に影響を与えます。「生まれつき」が「育て方」を変え、その「育て方」が「発達」を変えるのです。

 

 逆に、「育て方」が「生まれつき」を変えてしまうこともあります。例えば、遺伝子のなかには、育ちの「環境」によって、その影響が現れたり消えたりするものがあるそうです。いくら生まれつき才能に恵まれていても、それを磨く「環境」に恵まれなければ、その才能が開花することはない、というわけです。

 

 生まれつき与えられた本人の「性質」は、周りの人達との「出会い」を通して変化したり、成長したりします。「出会い」によって本人も変わるし、周りも変わります。成長して変化した本人の「性質」は、また新たな出会いを経験して変化します。そういうことを繰り返しながら人は成長していくのです。「生まれつき」を決める遺伝子も、「育て方」を決める環境も、子どもが自分では選ぶことができない「運命」です。けれども、それで未来が決まってしまうかというとそうではありせん。「出会い」と「変化」の繰り返しが、多様な未来の可能性を生み出しています。色々な偶然や、ちょっとした判断の分かれ道が、将来を大きく変えてしまうこともあるのです。

 

Ø  発達障がいは「生まれつき」

 さて、事例のAくんは「注意欠如多動症(ADHD)」という発達障がいがあると、後からわかりました。つまり、Aくんはには、生まれつき「活発でよく動き、集中力が不足している」という性質があった、ということです。そして「お母さんの育て方」だけが困っていることの原因ではない、ということがわかります。

 

 確かに発達障がいには生まれつきの原因があります。しかし、それで未来が決まってしまうかというと、そうではありません。

 

 診断を受けて、それを理解すれば、周りの大人は本人へ関わり方を工夫することができます。例えば、「叩いて叱る」のではなく「分かりやすく教える」とか、「できたときに褒める」というやり方があります。そうすれば本人の体験する「出会い」の姿は変わり、本人の行動も変わってくるでしょう。「叩いて叱る」の背景には、「なぜうちの子はこんなことを!」という不安や怒りの感情があるもしれません。しかし、正しく知ることで、不安の気持ちは軽くなるはずです。そうすれば、効果的な方法を探しやすくなります。診断はレッテル貼りのためはなく、解決のために受けるものなのです。

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