第666号(付録)教区会開会演説

第148(定期)教区会 開会演説

主教 フランシスコ・ザビエル 髙橋宏幸

― 「はじめに」 ―
 本日は、東京教区第148(定期)教区会に休日の中お集りいただきました議員、関係者の皆さま、教区会書記局、教区事務所、会場準備をしてくださった方がたに深く感謝と御礼を申し上げます。
本教区会は、東京教区としての最後の教区会になります。1923年の教区設立から100余年の長きに亘る歴史の中で、教会、教区、関係諸施設・団体の宣教と奉仕の働き、祈りと霊性の上に多大な献身をしてこられた多くの先人、先達たちへ深い感謝をお捧げいたします。教区会は聖霊の導きを求めながら、共に耳を傾け、共に識別し、共に歩むための大切な議会、また機会ですので、よろしくお願いいたします。

― 「これまで、そしてこれから」 ―
 昨年秋の「東京教区第147(定期)教区会」、並びに「北関東教区第93回(定期)教区会」にて宣教協働・新教区設立へ向けての議案が可決されました。教区の適正な配置や再編を求める具体的な決定には、1971年の日本聖公会第31(定期)総会で「日本聖公会教区制問題研究委員会」が設置されて以来、半世紀以上の時を要しました。但し、当初から言われていた「宣教理念、教会の体質改善」という本質的なことは決して解決済の過去のテーマになったわけではありません。
 近く「東日本教区第1(定期)教区会」が招集されますが、これまでの伝統、宣教の業と霊性は、更に新教区の歩みの中で引き継がれてまいります。「古い伝統は新しい伝統を生み出し、新しい伝統は古い伝統を活かす」ことを大切にと祈ります。また、日本聖公会が更に先に進むことと深く関わる働きであることも心に留めたいと思います。
 一致とは単に同一形にするのではなく、異なる意見を排除するのでもなく、耳を傾けながら共鳴し合うことの中で成し得ること、希望と癒しを見出すための働きです。私たちキリストの教会は、常に共に歩まれるイエス様とともに、未来を創り続ける主の器として今を歩むキリストの弟子集団であり、信徒、教役者が協働して成り立つものです。各々が授かっている賜物を活かし合いながら、託されている使命のために働くとき、教会はより豊かにされていきます。各個教会の規模に関わらず、各々に苦労や問題、課題があり、そこには自ら負うべきもの、互いに担い合い、分かち合うものがあり、その識別は大事なテーマです。また、世俗化が進む中で社会との関係において、学校や病院、幼稚園、保育園との関係も重要なテーマです。教会と関係諸施設との互いの働きを尊重した協働を更に探り、深めていかねばなりません。
 新教区へ向け、教会の働きを支えるための教区の枠組みの構築や「宣教センター」具体化へ向けて課題を出し合い、これからを考え続けること、広報などコミュニケーションの働きの向上に努めながら、各教会・礼拝堂の出来事を教区の出来事として分かち合う「和と輪」を築いてまいります。宣教と財政の一体化、すなわち宣教のビジョンと財政は別物ではなく、不可分であることを揺るがさずに、今後の宣教・牧会体制の将来像と重ねて検討を深めることなどが肝要です。
 これまでに、北関東教区との合同礼拝、巡礼プログラム等を通して得た「出会う喜び」を力、また礎に、足りないところを補いつつ更なる具現化に進みます。新教区の歩みを「信仰・希望・愛」の取り組みとして位置付けたいと願います。変わるため、進歩するためには勇気が要ります。これからもさらに歩みを前に進めてゆくために、その勇気を祈り求め続けます。そして、その勇気はみ言葉に仕え、み言葉により頼み、み言葉を宣べ伝えるための勇気でもあります。
 来る4月25日(土)には、聖アンデレ主教座聖堂で「信徒奉事者の祝福式と学び」を開催いたします。これは、下町教会グループの委員からの提案に端を発し、信仰と生活委員会が大事なテーマとして受け、実施に至ったものです。今後「チームミニストリー」や共同牧会体制など、信徒・教役者が共に担う礼拝・宣教・牧会を巡り積極的な学びと実践を積み重ねていくことは、古い枠組みからの脱却、私たちに相応しいパラダイムシフトに通じるものとなるに違いありません。

― 「各プロジェクト」 ―
 信仰と生活委員会の各プロジェクトにおいては、「共育プロジェクト」が定例の黙想会を、また管区ナザレ委員会と共催で「ナザレの家での黙想プログラム」「読書会」が継続しています。「青少年活動支援プロジェクト」では、浅草聖ヨハネ教会のお力添えで青少年達が集まれる場所となってきています。他にも、「中高生世代キャンプ」が昨夏も行われ、良き交わりと出会いの時となっています。「小笠原プロジェクト」では、「小笠原青年の旅」の中、同世代との出会い、自然に囲まれた環境や交わりの中で神様との出会う機会となっています。聖ジョージ教会信徒の方との交わりもさらに深められてきています。今年初夏には、更に上の世代の方がたによる「小笠原ツアー」が行われます。歴史に翻弄されながらも、「島の教会」として人々の信仰生活に息づいてきた聖ジョージ教会を教区として支えてまいります。

―「 日本聖公会の動きとのつながり」 ―
 日本聖公会では、先に「202230」という、教会の意思決定機関に30パーセントの女性参画を目指す動きが始まりましたが、この度「203040」という、2030年には40パーセントを目指しておりますことを覚え、大切にしてまいります。
 また、「日本聖公会セーフチャーチ・ガイドライン」が、今年の定期総会で決議されるよう準備が進められています。東京教区においても継続的に、教役者、日曜学校など子どもに関わる方がた、教会委員の方がた、青年を対象とした「セーフチャーチ・ガイドライン」研修会も重ねていただいています。また、教会活動において、子どもや青少年の安全をどのように確保するかを明確にし、関わる一人一人が共通認識を持つ必要性から、「子ども・青少年活動に関わる関係者のための行動指針」を策定し、4月から運用するための準備が進められています。これらは多様な人びと一人一人の尊厳がさらに守られ、保たれて生きていく可能性を提供することと深く関わっています。

― 「合理的配慮」 ―
 昨年、教区会当日に伺った「合理的配慮」の話を端に発足した「合理的配慮ワーキンググループ」は、精力的に働きを進めてくださっています。これは、突き詰めれば教会の在るべき姿と役割、公共性を目指すものであり、神様からの尊い授かりものであるいのちに繋がる、キリストの教会にとって基本的信仰のテーマの一つです。配慮とは賜物が豊かに活かし合えること、他者への気づきと祈りが動機となるはずです。先般、同グループからの提言に対し、日本聖公会主教会として「合理的配慮として祈祷書データを共有化することについては、現行祈祷書の場合、教区主教の承認のもと各教区で対応する」ことが承認され、これにより東京教区として式文データの共有化を進めてくださっています。  
 加えて、教区礼拝、聖職按手式等、障がい者への配慮が当然のこととして備えられ、皆が参加できる礼拝を目指そうという提言もなされています。また、先のアンケートから、大きな文字、他言語、点字など、共有できる式文や聖歌のデータ化への準備、教区事務所敷地内点字ブロックの補修などの働きもなされています。

― 「橋を架ける教会に」 ―
 未だに世界中には不安、不要な争い、疑いなど、多くの課題や困難があります。そのような中で、「共に歩む」とはキリストの歩み方であり、キリストの教会は一緒に歩むことによって希望を生み出すものに成長させられます。キリストの愛によって共に歩むことを、絶望を打ち破り、希望を生み出す私たち教会の原動力にしていきたいと祈ります。
 前回も記しましたが、「壁を作るだけで橋を架けない教会」にはならないため、いのちを愛でる教会に成長し続けるために、聖霊の導きを祈り続けます。様々な必要や異なる価値観を持つ人との交わりの中でこそ、自らの本来の使命、役割、可能性に気づかされていくのがキリスト教の信仰の歴史であり、その意味で現状に甘んじることは、教会そのもののいのちの危機とさえ言えるでしょう。

― 「いのちに仕える働き 地域社会を心に留めて」―
 これまでも申し上げてきましたが、様々な出来事やある人たちの都合やエゴによって神様が創造された世界が傷つけられている社会の中、イエス様は「誰のために」「何のために」この世にキリストの教会を建てられ、決して完璧とは言えない私たちを弟子として招かれたのかを問い続けたいと思います。また、「こども食堂」「フードパントリー」「給食活動」「野宿者支援」「特別養護老人ホームやデイケア」「学童保育や放課後の見守り」「デイサービス」等、社会に仕える働き、地域と共なる働きが積極的になされていること、教育、福祉、医療機関や市民団体とのつながり、難民支援など、各現場でなされている、いのちに仕えるという宣教の業を祝福し続けます。 
 尊厳限りないいのちを尊び行動する中で、キリストの教会は、よりキリストの教会として成長していきます。「わたしは植え、アポロは水を注いだ。しかし、成長させてくださったのは神です」(コリントの信徒への手紙Ⅰ 3:6)という聖パウロの信仰に倣ってまいります。

― 「聖職養成に関して」 ―
 神志那愛惠神学生が、この4月から聖公会神学院二年次に進まれます。また「見守り(同伴)プログラム」を終えられた方が1人、他に4人がプログラム途上に、さらに1人の方から聖職候補生志願が出されています。聖公会神学院のオンラインコースでは4人の方が受講し、学びを深めていらっしゃいます。引き続き皆さまのご加祷をお願いいたします。また、既に広報されていますが、明日21日(土)午後6時から聖アンデレ主教座聖堂にて、藤田美土里執事の説教試験が行われます。聖霊の導きをお祈りください。

― 「感謝」 ―
 最後になりますが、本年3月末を以て定年退職される大畑喜道主教、上田亜樹子司祭のこれまでの働きに感謝いたします。4月以降も定住嘱託として奉仕をしてくださいますので、引き続きよろしくお願いいたします。また、1年延長していただいていましたが、西平妙子司祭が沖縄教区へ戻られます。東京教区におけるこれまでの働きに感謝いたします。
 また、これまで教区主教をサポートしてくださいました常置委員長はじめ委員の皆さま、同労の教役者、信徒の皆さまに、この場を借りて深く感謝と御礼を申し上げます。

 後ほど「感謝表明」が提案されると思いますが、1978年4月に日本聖公会聖救主教会が経営する公益事業として、従来の幼稚園、保育所の枠を超えた幼児教育を目指して誕生した「聖救主教会キッドスクール」が、2026年3月末をもって47年間に及ぶ幼児教育施設としての働きを閉じることになりました。大変残念な思いは禁じ得ませんが、これまで神様から注がれた恵みと祝福、また祈りをもって尽力してくださった方がたへの御礼を申し上げ、感謝をお捧げいたします。
 また、昨年12月26日を以て活動を終了し、この3月7日の総会にてNPO法人を解散しました「ぶどうのいえ」の30年に亘る働きを覚え、感謝いたします。30年前に「聖テモテ愛の家」として始まり、東京で高度小児医療を受ける子どもたちとそのご家族に、祈りと心、力を注いでこられた全ての方がたの献身を覚えますとともに、これまで導き、見守ってくださった主に感謝をお捧げいたします。

 本教区会の協議、決断とすべての営み上に、主の祝福と聖霊の導きが豊かに注がれますことを祈ります。御清聴有難うございました。