原発のない世界を求める週間2024【報告】オンライン講演会「原発政策のいつわりと、能登半島地震が示したこと」

2024年「原発のない世界を求める週間」の報告が6月25日発行の「日本聖公会管区事務所だより」に掲載されました。原発問題プロジェクトウェブサイトには、同じ内容でweb用に編集したものを掲載します。

6月2日に内藤新吾さんを講師に開かれたオンライン講演会の内容が、まとめられています。

講演会は「原発のない世界を求める週間2024」のページからYouTubeでご覧になることができます。また、講演会資料もダウンロードしていただけます。どうぞご活用ください。

原発のない世界を求める週間2024 オンライン講演会「原発政策のいつわりと、能登半島地震が示したこと」

6月2日(日)午後4時~6時、標記の演題で内藤新吾氏のオンライン講演会を開いた。

内藤氏は1961年生まれ、現在は千葉県松戸市の日本福音ルーテル稔台教会牧師。初任地の名古屋にて被ばく労働者との出会い、静岡県へ転任し「浜岡原発を考える静岡ネットワーク」役員を経験、日本キリスト教協議会「平和・核問題委員会」長、「原子力行政を問い直す宗教者の会」事務局、「宗教者が核燃料サイクル事業廃止を求める裁判」共同代表。著書に『キリスト者として原発をどう考えるか』(いのちのことば社)、『原発問題の深層一宗教者の見た闇の力』(かんよう出版)他。

原発と核にまつわる歴史的、科学的、倫理的そして信仰的な広範囲に及ぶ講演は、初めて接する衝撃的な内容がいくつもあり、講演会後に目が開かれた、合点がいったとの感想が幾人からも聞かれたが、私には参加者全員の声だったように感じられた。盛り沢山な内容を後で復習できるようにと、氏は豊富な資料をpdfにして惜しげもなく提供してくださった。

氏の信念の根幹は「脱原発は当たり前のことである」で、これを全編に渡って語られて力強かった。その様子は原発問題プロジェクトHPにあるYouTube映像で視聴ください。

日本の原発政策

講演はまず、2022年8月24日に岸田首相が原発政策大転換を表明したいきさつから始った。以後、如何に原発政策がいつわりの下に行われてきたかが述べられた。大転換は経済産業省の以前からの構想で、ロシアのウクライナ侵攻によりエネルギー供給危機になり、安いと信じこませている原発をこの機に乗じてなされた政策だった。

国や電力会社に都合の悪い材料は隠蔽やごまかしが行われてきた。1984年外務省極秘文書は原発が攻撃されたらを想定しない、1960年国のマル秘資料では原発事故が起きて国民全員を保障したら59年の国家予算の2倍以上1兆4950億円となるので闇に葬った。名古屋で裁判中の老朽原発40年廃炉訴訟で、原子力規制委員会が中性子脆化試験の原データを見ずに運転期間60年延長許可を与えていたことが明らかになった。

2023年2月GXに向けての基本方針閣議決定は、規制委員会が容認する前だった。5月31日GX関連法案はわずかな審議で衆議院可決した。法案で60年超の原発審査判断するのは規制委員会ではなく経産省に代わった。現在規制委員会トップ3は経産省出身者で、私たちはもう規制委員会に判断を委ねてはいけない。

志賀原発

志賀原発の基準値振動は想定を超えたが超えるというのは想定が甘いということ。活断層の長さは150kmにも達した。20kmも離れた2つの活断層が連動するのは想定していなかった。変圧器油漏れ、モニタリングポスト18カ所で計測不能となり屋内退避か避難か判断できない、道路寸断、孤立して避難は不可能。避難計画は絵に描いた餅であることがはっきりした。避難を国は策定しない。

改正原子力基本法と脱炭素

改正原子力基本法は、脱炭素は国の責務とし原子力は脱炭素だから国の責務でこれを進める、もし電気代でコストを回収できないときは税金を投入する条文になっている。世界では太陽光、風力が伸びに伸びているのは安いから。実は原発が一番高く52円/キロワット、核のゴミ処理費用は青天井。日本人は政府にだまされている。日本は地熱資源量が世界第3位で潜在力は原発20基分。世界一の技術がありメイドインジャパンの機械が海外40か国に輸出されている。これを多くの日本人は知らない。

第五福竜丸と反核運動

1954年5月1日ビキニ環礁での水爆実験で第五福竜丸が被爆した。翌日、中曽根委員長の議会での議員説明は「米国の旧式兵器を使うのは嫌だ、原子力兵器を持ちましょう」だった。第五福竜丸が帰還するのに2週間かかり、そこから反核運動が起った。国は核商売したい、改憲したいのだが、憲法9条が首の皮一枚で核武装を食い止めている。

再処理工場

六ヶ所再処理工場に使用済核燃料が約3000トンある。アクティブ試験運転でクリプトン85も炭素14も全量排気、トリチウムも全量排水した。原発1基1年分の放射性物質をたった1日で放出した。薄めるからいいんだと言うが、私たちは言う「毒を流すな!」。

イギリスとフランスの再処理工場周辺では小児白血病が多発した。1998年、イギリスのセラフィールドから1000km離れたノルウェーの海産物が放射能汚染され、当時のボンデヴィック首相がブレア首相を直接訪問し再処理工場の停止を要請した。「閉鎖してほしい」。私の友人のトール・ヨルゲンセン牧師(ノルウェー国教会のビショップ)はボンデヴィック首相の友人で、計3回直接停止を申し入れた日付を調べて、2002.5.21.と2003.5.15だったと分かった。私は「信仰の問題だ!」と思った。「原発問題特に核燃料サイクル事業を止めるのは信仰者の問題だ!」と。ノルウェー政府は、高レベル廃液タンクの爆発事故を想定して、2日で到達するから止めてくれと要請した。

再処理工場は軍需工場だ。臨界や爆発事故を起こした。1980年フランスのラ・アーグ再処理工場はあわや欧州消滅寸前までになった。1957年9月、ロシアのチェリャビンスクで爆発が起き町が消滅したことが亡命科学者の告発で明らかにされた。「ウラルの核惨事」と言う。1976年、西ドイツ政府のケルン原子炉安全研究所が、重大事故で国民の半数である3000万人が死亡するシミュレーション結果の極秘レポートによって再処理工場はやめた。下北半島が大津波、震度6強地震に襲われ、六ヶ所再処理工場で放射性物質が1%洩れるだけで関東まで急性傷害レベル。みんな壊滅する。

高速増殖炉もんじゅ

廃炉をようやく決めた高速増殖炉もんじゅに2兆4000億円以上つぎ込んだ。六ヶ所再処理工場は年間維持費だけで1100億円浪費し続けている。仮にフル稼働して62kg/年取れるプルトニウムは純度99%のスーパー兵器級。レーダーにかからない超小型の戦術核が作れたら国の発言権は物凄く強くなる。商売になる。世界でただフランス1国だけが所有している。日本も欲しいので何がなんでも核燃料サイクルを止めない。本命は高速増殖炉だが、純度の低いプルトニウムを減らすためのプルサーマルとフルMOX大間原発も止められない。

平和と核の問題は繋がっている

平和と核の問題は繋がっている。日本の政府は長年ゴール(=核武装と核商売)を目指して9条改悪を狙ってきた。しかし今、ゴールそのものを無くせる時代に実は来ている。もんじゅ無きあとはドン詰まりの再処理事業を断念させれば、原子力政策全般を終えさせられる。26回完成時期を延期してきた六ヶ所再処理工場(=原子力政策の首根っこ、急所)を閉鎖に追い込めば、各原発の使用済核燃料の持って行き場がなくなるから、核のゴミ処分も決まってないから、全国の原発が止まる。核燃サイクルのために国は原発をやってきたからだ。

宗教者核燃裁判 電力消費地である東京

宗教者核燃裁判を電力消費地である東京で提訴した。傍聴に詰めてもらいたい。原告の力になる。関心度が高ければ裁判官に訴えとなる。次回は9月、核燃料サイクル事業は直ちに止めてほしい。

本の紹介

『原発問題の深層一宗教者の見た闇の力』内藤新吾著
『核燃料サイクルと迷宮 核ナショナリズムがもたらしたもの』山本義隆著

最後に

  • 原発のない世界を求める週間2024」ページにて本オンライン講演会の録画と、講演資料PDFをご覧いただけます。
  • 「『脱原発の視点で聖書を読む』―2024年2月オンライン学習会講演録―内藤新吾 日本福音ルーテル教会社会委員会編」
    内藤新吾先生と発行元のルーテル社会委員会・長の小泉基先生の寛大なお心により印刷許可を得ました。後日、全国の日本聖公会の教会と教役者宛に郵送します。

日本聖公会正義と平和委員会原発問題プロジェクト長
主教 長谷川清純