ぼやき、地元民の不安と怒りは続く

今回、福島市に在住の浅原和裕委員が生活者の視点から、「ぼやき、住民の怒りと不安は続く」と題して、私たちに生の声を届けると共に、汚染水の海洋投棄など、幾つかの問題提起をしています。将来を担う若い人たちへの呼びかけもしています。浅原委員の「ぼやき」は、原発事故の風化を懸念する私たちに、さまざまな気づきを与えてくれるように思います。どうぞご一読ください。

原発問題プロジェクト 浅原委員のぼやき 2022年9月2日記

モニタリング・ポスト(放射線監視装置)

私が毎日確認する地元のモニタリング・ポスト(放射線監視装置)の線量値は0.114μSv/h(マイクロシーベルト/時間)くらいで、ここ10年設置以来ほとんど変わらない。モニタリング・ポストは空間線量を測っているが、問題なのは空間ではなく地面からの放射線量だ。この数値が決して低くないことは理解してもらいたい(※1)。最近、小名浜のある地点で、線量計の部品を交換したいけれどメンテナンスが大変なので本体を撤去していいか?なんてことがあったそうで、もちろんお断りしたようだが、そんな感じで個別撃破で撤去され、嘗てそんなものがあったこと自体きっと忘れ去られるんだよね。

(※1)画像出典:内閣府原子力委員会

まだ多くの必要除染地域を残しながら(※2)、福島第一原発の敷地内に貯まり続ける汚染水を早く海に流してしまいたくて1km掘った地下トンネルから薄めて流すと言っているが(※3)、本気なんだよねこれ。薄めたって絶対排出量は変わらんでしょ!

  • トリチウム薄め排出問題絶対反対!!
  • 英知を尽くしてトリチウムを分解して無毒化すべし!!
  • 風評基金(※4)作ったっていつまで面倒みてくれるの?
  • 常磐ものはおいしくて本当に価値ある賜物なのにどうしてくれるんだ!!

(※2)
住民帰還のための除染は行われているものの、森林などを含め除染できない・されていない場所は多く残っている。
『戻せ恵みの森に ―原発事故の断面― 第3部・除染』 福島民報(2022年2月22日〜2022年3月5日)
『福島第一原発事故から11年 全域除染から後退に住民怒り「汚したら、きれいにして返すのが当然じゃないか」』 東京新聞(2022年2月19日)

(※3)海底トンネルを含む処理水海洋放出施設のイメージ。クリックで拡大 画像出典:時事ドットコムニュース

(※3)
汚染水を浄化処理する際に発生するトリチウム以外の放射性汚染物の廃棄物を保管するHICと呼ばれる容器の置き場所が2023年4月以降満杯になる、という別の問題も指摘されている。
『東京電力またも泥縄式対応…廃棄物保管場所がパンク間近 福島第一原発の汚染水処理滞る恐れ 規制委が増設指示』 東京新聞(2022年9月13日)

(※4)
『漁業継続へ新基金創設 政府方針 処理水処分の行動計画を初改定』 福島民報(2022年8月31日)

「すいませんしばらくの間ちょっと汚くて有毒物質が混じってるけどあなたの家の前の側溝に流していい?大丈夫だからさ。」という事なんだよね。海外の原発付近ではそっと流されているトリチウム、すなわちその汚染地区は人的被害も増大(※5)

(※5)
ドキュメンタリー映画『核の大地プルトニウム物語』(監督:渡辺謙一/2015年/84分)では、米国・フランス・日本の原子力施設、とりわけ、使用済み燃料の再処理施設すなわちプルトニウムの生産工場と、周辺住民、自治体との関わりが描かれている。

原発事故の被災地に建てられている新しい復興施設を訪問してみると、大変だったけれど、「明るい未来!頑張ろう未来!」ばかりが強調されており、被災前の「明日への希望、原子力」、「原子力は心の」、「躍進六ヶ所村」、「効率的で廉価な原子力発電」、「何度失敗しても究極の原子力発電!」なんてキャッチフレーズさえ彷彿とさせる。だが、どうして何故こうなったのか?という観点は薄い。「私たちは忘れない津波の被害!」のうち、許せないのは人災であり、だんだん矮小化されつつある水素爆発後の放射線被害ではなかったのか。

津波で避難している人々と汚染で避難している人々では避難の意味が大きく異なっている。汚染地域だけ永遠に残されるんだから。

若い人々に心から訴えます。将来に渡る廃炉活動や作業をしっかり見守ってほしい。本当に安全に廃炉が出来るのか。総工費全体で一体お金いくら掛かったのかも調べてね。当初2兆円が今では8兆円(※6)、大きく見込が狂ってきています。まだまだ増えるよ。とても廉価とは言えないですよね。事故が起こったら大きな代償を払わなければならない。更に今後、国費が投入されたりして…。

結局のところ、予測できたのにやらなかった、防御しようとしてやらなかった(※7)。資金がかかるし、現実的でなかった?「想定外」という枠内にはめ込んで歴史の闇にフェードアウトさせようという魂胆なのだろうか。知らなかった地元民はどうすればよかったのか?

ところでコロナ禍に紛れて忘れていたけれど、いつの間にか再稼働したところはいったい何ヵ所?(※8)

(2022年9月10日加筆ぼやき)

クリックで拡大  ※一部画像処理をしています

9月10日の福島民報に折り込まれていたチラシ。「皆様からの声におこたえします」と書いてあるが本当か?(※9)

(※9)
「東京電力が福島第一原発の視察者に、放射性物質のトリチウムが検知できないうえに、セシウムについても高濃度でないと反応しない線量計を使い処理水の安全性を強調する宣伝を繰り返していることが本紙の取材で分かった。」
出典:『東電、トリチウムを検知できない線量計で処理水の安全性を誇張 福島第一原発の視察ツアーで』東京新聞(2022年10月3日)

(今回おわり、ぼやきは続く)

(文責:原発問題プロジェクト委員・浅原和裕)