「宗教者核燃裁判」5回目の口頭弁論を振り返る(1)

宗教者核燃裁判は「宗教者が核燃料サイクル事業廃止を求める裁判」の略です。
日本各地に住む宗教者・信仰者が原告となり、日本原燃株式会社に対して六カ所村再処理工場運転の差し止めの請求を東京地裁に訴えています。私たち原発問題プロジェクトの委員もこの裁判の原告団に加わっています。

2022年12月20日(火)、東京地裁での第113号法廷という部屋で宗教者核燃裁判の第5回目の口頭弁論期日があり、その後に港区にある日本聖公会聖アンデレ教会ホールで集会が開かれました。

この記事では、宗教者核燃裁判が実際はどんなことを訴えているのか、今どのような状況にあるのか、についてお伝えします。

事実との対比

争点は専門技術的な内容ではありません。
将来起こるかもしれない大地震によって引き起こされるかもしれない事故の危険性を予測するものでもありません。

このことを、原告側の弁護団の一人、北村賢二郎弁護士は、法廷にいた3人の裁判官に伝えました。

この裁判の争点は、六ヶ所村再処理工場建設の安全性と、それを導いた根拠は正しいですか?と日本原燃に問うもので、これまでの裁判の中でも繰り返し訴えられてきました。第5回口頭弁論でも北村弁護士はパワーポイントを使いながら、この事について、シンプルに、わかりやすく示しました。

日本原燃は、六カ所村再処理施設は安全の規制基準に達していると主張しています。しかし、日本原燃が安全だという根拠を、過去の記録やデータ(事実)と照らし合わせて考えると、誰がみても、違うのではないか?ということがわかります。北村弁護士は、日本原燃が六ヶ所村再処理工場の安全性の根拠が正しいのなら、それを立証するのは日本原燃の責任ですと訴え、裁判官もこれを認めています。現在、回答を待っています。

北村弁護士のパワーポイントは、YouTubeの『宗教者核燃裁判 連続オンラインセミナー 第4回「日本原燃の不合理な想定」』でも見ることができます。

『宗教者核燃裁判 連続オンラインセミナー 第4回「日本原燃の不合理な想定」』

命に対する責任

裁判の後半、日本基督教団の秋葉正二牧師による意見陳述がおこなわれました。 

意見陳述とは、原告側の訴訟に関わる当事者が、これまで受けてきた被害やこの訴訟に対する思いなどを述べることです。
意見陳述をする人は、予め準備して裁判所に提出した書面を法廷での場で読みます。
秋葉牧師が今回の口頭弁論のために準備した<準備書面>は以下のURLに掲載されています。
https://www.kakunensaiban.tokyo/wp-content/uploads/2022/12/jyunbishomen16.pdf

秋葉牧師は陳述の中で、

「日本の原発は都市圏から離れた海岸沿いの過疎地に建設されますが、大量の電力を消費するのは大都市です。これは原発を推進する国も電力会社も原発事故の深刻な危険性を認識しているからです。また金の力で危険を過疎地に押し付ける都市住民のエゴイズムでもあります。私たちの社会は人間のいのちが等しく大切にされる社会であるべきで、原発は明確な差別の象徴です。

準備書面より抜粋

と訴えています。
そしてロシアによるウクライナ侵攻で私たちが見たことは、原発で使用される核燃料は原爆となること。福島で起きた事故の教訓を忘れてはならないこと。そしてキリスト者としての命に対する責任について訴えました。

この日、開かれた法廷を、私は傍聴しました。
裁判というと、一般の人が理解するのが難しいことを、専門家が専門用語を並べて主張し合うという印象を抱いていましたが、実際に、語られる言葉や論点はとても分かりやすいものでした。専門技術の話ではなく、原告は、いのちのことについて訴えています。

あなたも宗教者核燃裁判を応援しませんか?

日本聖公会正義と平和委員会原発問題プロジェクトは、宗教者核燃裁判に連帯しています。
一人でも多くの聖職・信徒の皆様にこの裁判に関心を寄せていただけるよう、発信を続けます。

この裁判の趣旨に賛同してくださる方は、サポーター登録ができます。また、当事者となってこの裁判の原告団に加わってくださる方も求めています。2022年12月現在で246名の原告が集まっています。

また、一人でも多くの方が裁判の傍聴に来てほしいと宗教者核燃裁判の事務局はお願いしています。原告やサポーターに限らず、傍聴人が多ければ、それだけ多くの人がこの裁判に関心があるということを示せるからです。

(文責:原発問題プロジェクト委員・福澤)