高浜・美浜原発運転延長認可取り消し訴訟、棄却 ~原発の運転延長をめぐる初めての司法判断~
2016年に、愛知、福井両県の住民が国を相手どり、運転開始から40年以上が経過した福井県にある関西電力の高浜原発1、2号機と美浜原発3号機を稼働し続けるのは危険だとして、運転延長認可の取り消しを求めて提訴しました。
この裁判の判決が2025年3月14日に名古屋地裁であり、「原子力規制委員会の判断に不合理な点は認められない」として棄却されました。
2011年の東京電力福島第一原発の事故後、原発の運転期間は原則40年、最長60年とされる中、高浜原発1、2号機と美浜原発3号機の3基は原子力規制委員会の新規制基準に適合したとされ、2016年に最長20年の運転延長が認められました。その結果、美浜原発3号機は2021年、高浜原発1、2号機は2023年に再稼働しています。

この裁判で以下の判断が示されました。
- 原子炉圧力容器が中性子を浴び続けるともろくなることが分かっているが、運転開始から60年の時点で事故が起きた場合に、破壊の恐れがないとした規制委の判断は妥当か。ましてやこの60年には改正電気事業法により運転停止の期間は含まれず、60年を超える運転が可能になった。
➡ 審査で示された基準は、外部の専門家も入って確認されており妥当。 - 耐震設計の目安となる基準値振動に関して、想定を超える揺れに繰り返し襲われた場合に大きな危険性がある。
➡ これまで具体的な事例があるとは言えない。起きたとしても重要施設の安全機能が損なわれる恐れはない。 - 使用済み核燃料の問題が解決していない。
➡ 再処理の取り組みが続けられており、核燃料サイクルが破綻しているとは言えない。
この度の判決は、老朽化した原発にお墨付きを与えるもので、今年2月に閣議決定した「第7次エネルギー基本改革」で示された政府の原発回帰を後押しするものです。40年、50年、60年、60年超、時の経過と共に老朽化が進んでも原発は事故を起こさない、これは全く根拠のない判断で、裁判でも明確な根拠は示されませんでした。そもそも、原発や核の専門家でない裁判官が、正確、かつ公正な判断ができるのか、大きな疑問です。
私たちは福島第一原発事故の経験から、ひとたび事故が起きれば広範囲に、そして長期的に被害が及ぶことを学びました。また、放射性廃棄物処分の問題は事故から15年目を迎える現在も解決できないままでいます。
福島第一原発の事故から多くの教訓を得て、「核といのちは共存できない」と確信する私たちは、次世代に及ぶこの判決をどう捉え、どう声をあげるのか、私たち一人ひとりの責任が問われているように思います。
(文責:原発問題プロジェクト委員・池住圭)