東京教区第144(定期)教区会 開会演説

 

東京教区 第144(定期)教区会 開会演説
2024年3月20日(水・休)
主教 フランシスコ・ザビエル 髙橋 宏幸

― はじめに ―
本日「東京教区第144(定期)教区会」に、休日の中ご参集いただきました議員の皆さま、書記局、事務所、会場準備をしてくださった方がたにこの場を借りて深く感謝を申し上げます。また、キリストの弟子としてキリストに倣い、従い、福音を宣べ伝える使命を委ねられている者として私たちは集められています。

― 大切にしていくこと ―  
私たち東京教区は、教区成立101年目の時を歩み出しました。「私に従いなさい」というイエス様の言葉の背景には、「あなたがたは、もちろん従ってくれるはずだ」というイエス様からの信頼が感じられます。私たちは洗礼を授かりクリスチャン、キリスト者とされましたが、それ以上に、イエス様からの信頼の上に弟子とされていることを心に深く刻み、感謝し、大切にしていきたいと思います。弟子は決して一人きりでは成り立ち得ません。私たちが生かされている時代、場所の中で、イエス様がなさることに弟子として仕えることこそが、キリストを頭にいただく私たち、即ちキリストの教会が大切にし続けていかねばならない使命です。
その使命に基づく働きとして、教区内教会、礼拝堂、施設での礼拝、宣教、奉仕の営み、殊に貧困に向き合う働きである「こども食堂」「フードパントリー」「給食活動」「野宿者支援」、子どもの安全な居場所を提供する働きである「学童保育」「放課後等デイサービス」(2024年4月開設)「幼稚園」「保育園」「学校」の営み、またいのちの尊厳を傷つけられている「移民・難民の方がたへの支援」等が行われています。これらの働き一つ一つは、いのちに仕え、隣人となるべくイエス様が命じられた「行って、あなたも同じようにしなさい」というみ言葉に応えようとする実践であり、その働きに祝福を祈ります。他にも、様々な形でイエス様のみ言葉に応えようと努めておられる働きは少なくはありません。
先週3月16日(土)、地域の方がた、ライト学童保育の支えをいただいた協働事業でもある聖救主福祉会「深川えんみち」竣工式が行われました。教会の周辺、地域の方がたと力を合わせて地域に仕える働きを覚えて祈ります。また、社会福祉施設の働きに関わっておられる方がたへの感謝を表しますと共に、法人格の相違を超えてその理念にみられる共通理解、繋がりを今後も大切にしてまいります。いのちに関わり、仕える働きはイエス様の意に沿うものです。更に祝福を祈り続けます。

― 「宣教協議会」からの呼びかけ ―
昨年11月に開催されました「2023年日本聖公会宣教協議会」からの呼びかけが出されました。その中には「神のみ声に耳を傾けよう」「人びとの声に耳を傾けよう」「世界の声に耳を傾けよう」とあり、その目的は「いのちに仕え、となりびととなるために」とあります。これは、決して一方通行の呼びかけではなく、如何にしたら私たちキリストの教会がより良く、より正しく耳を傾けられるか、それぞれの教会・礼拝堂、施設、委員会、団体、種々の集会、一人一人の日々の信仰生活の中で具現化していくことができるかが期待されてもいます。決議や提言ではなく呼びかけである以上、「自分(たち)はどう聴くか?」「自分(たち)に与えられている賜物を、誰のために、どう用い、献げることができるか?」を熟考、黙想し、更に具体的に応えていくことが求められています。それはイエス様からの信頼への応答へ繋がるはずです。
また、2022年開催のランベス会議(全聖公会主教会議)より発表されました「ランベスコール」の日本語版も出されました。ここでも「コール」、即ち「呼びかけ」という言葉が使われています。全部で10の呼びかけがありますが、既に教会、礼拝堂、施設等に送付されていますので、ぜひ目を通し、学んでいただきたいと思います。
既にご存知のように、先に出されました全聖公会の「宣教の5指標」の中、取り分け世界レベルで課題とされています「被造物の本来の姿を守り、地球の生命を維持・再生するために努力すること」「地球規模で起こる気候危機、環境破壊、急速に失われつつある生物多様性を見過ごすことによって、特に弱い立場にある人々の生活を奪い、私たちの子どもや孫の未来を脅かしている。いのちを守る教会としての成長すること」を引き続き、キリストの教会に託されている大切な使命、課題として受け止めてまいります。
また、前教区会にて配布いたしました、殊に子ども、青年、弱い立場のおとなの安全を高めるための「セーフチャーチ・ガイドライン」(日本聖公会版)が発行され、管区主導で様々な教会活動に関わる方がたを対象に「ハラスメント研修」がなされていますが、管区、教区での継続的な学びは必須です。更に、この2月には主教会教書「あらゆるセクシュアリティの方々の尊厳、いのちが守られるために」が、日本聖公会主教会より出されました。
東京教区内には様々な国籍(民族)の方がたがおられること、多様なジェンダーで構成されていること、多様な文化的背景を持つ方がたと共に生活していることを深く心に留め、また、ハンディをもつ方がた、日本語以外の言語を話す方がた等、多様な人々によって構成されるべき、私たちキリストの教会の環境設定を考える必要性が増していることも心に留め、それに即した動きへと繋げてまいります。

― 平和と和解に向けて ―
未だ地球上で不要な争いにより、流されてはならない血が流されています。世界各地の戦争、紛争で奪われ、傷付けられている多数のいのち(2月末時点でガザでは犠牲者3万人、57万人以上が餓死寸前との国連報告)を耳目にします時、耳目を逸らすのではなく、イエス様の言われた「平和を作り出す」ことへの応答を真摯に祈り、殊に呼びかけに応えるべくエルサレム教区を覚えての祈りを続けてまいります。武力や抑圧によっていのちが否定され傷つけられている地域や国々の人々が速やかに解放され、癒され、回復されますように、自らのあり方も省みつつ日々深く祈り続けます。キリストの教会はいのちを傷つけ、尊厳を踏み躙ることに対して反対の立場を取ります。

― 「変革」に向かって ―  
新教区設立に向けての宣教協働が進む一方で、東京区の中では「教区費分担金制度等検討特別委員会」発足等、積まれた課題への取り組みが始動しています。
「共育プロジェクト」も立ち上げられました。「教育」ではなく「共育」としましたのは、神様によって共に育まれ、育み合うことを基にするためです。宣教協議会からの呼びかけにも「聴くこと」とありますが、先ずは神様の声を聴くことに始まり、他者に、出来事に、自らの心に聴き、その中で神様の声をより良く聴き分けるための識別、霊的同伴を目指したプログラムを始めます。キリスト教の霊性とは、祈りや黙想という静的なものと、それに基づいた動的(Movement)なものとを個々別々のものとはしません。長らくこの霊的共育が中々実践へ結び付かずに来ましたが、遂にその動きを始めてまいります。私たち一人一人聴き、受け止め、学び、行動してまいります。
また、各委員会の識別、見直しに繋げるものとして委員長懇談会を継続します。常設委員会の目的である「教区の宣教奉仕活動の継続的な前進をはかるため」(東京教区規則第23条)、委員会同士の横の繋がり、よい取り組みや課題の共有は今後の変革へ意義あるものとなるはずです。広報委員会や礼拝音楽委員会では新しい委員長のもと、今年度の活動が進められており、他にもその役割の識別と見直しの検討が必要なものがあると思われますので、今後教区会に於いて検討をお願いすることになります。
更に、教会グループ協議会の役割、宣教、牧会に関する共通の課題や働きの検討)、或いは見直しも外せません。現在、各教会グループから信仰と生活委員を選出していただいています。各教会、教会グループ、教区を繋げる大切な役割を引き続きお願いいたします。

― 子どもや青少年に関して ―  
昨年はS Sネットワークの「春まつり」と「秋まつり」「中高生世代キャンプ」「青年たちによる小笠原訪問」「全国青年大会」への参加が実施され、子どもや青少年のつながりの場が戻ってきました。今年度SSネットワークでは、新型コロナの影響で休止していた夏のキャンプ再開が予定され、中高生世代の夏のキャンプは既に準備が始まっています。
青少年が主体となって行う働きと、それを支える青少年支援の活動について、この世界の中で協働性を学びつつ、育まれていくことを通して幼い子どもから青年まで、世代間の連携による一貫した宣教体制を、共育の視点を大切にしながら目指して参ります。そのための青少年活動支援プロジェクトの働きとして、世代を超え、お互いの顔が見える関係づくりや研修の計画、青少年の主体的な働きを支えるために安心して活動できる場所の確保と見守り同伴する大人の存在が重要となります。

― 北関東教区との宣教協働・新教区設立 ―  
今教区会にも「北関東教区・東京教区宣教協働特別委員会」委員長の鈴木伸明司祭様にお運びいただき、後程話をしていただきますので、よろしくお願いいたします。
宣教協働に於いて「出会うこと 知り合うこと 祈り合うこと ともに働くこと」を柱に降臨節・大斎節のみ言葉と歩む黙想集作成、両教区の教会を交互に訪問し、教会の建つ地域や成り立ちを学び、知り合う巡礼企画、青少年に係わる協働や、礼拝音楽委員会の協働等、様々な活動が実施されています。キリストの教会としての成長を、教会・礼拝堂、教会グループやその他の場所で聴き、学ぶことを心に刻み、取り組んでいかれるよう祈ります。 また、予定では2025年秋の教区会にて「新教区設立について」の議案が出されます。これからの期間、解決すべき実際的課題の整理をしつつ、信仰的交わりが深まることを祈り、継続して種々の取組をしてまいります。

― コロナ後の教会 ― 
新型コロナウイルスの影響により、多くの教会で一種陪餐、愛餐会休止、信徒数の減少、Zoom礼拝、行事の変化等、以前とは異なる状況が続いていますが、これからの教会の姿を考える機会として変化を恐れず、教会の本質を見つめる、或いは見直す機会にしたいと願います。
また、先にも申し上げましたが、今この時、各々その場所にある教会としての使命を考えるきっかけとして「宣教協議会からの呼びかけ」を各教会、教会グループの中で共有し、それぞれの教会の賜物(目玉、強み、誇り)を検証し、見出すことへの機会を持っていただきたいと思います。これまでもお願いしてきましたが、引き続きお願いいたします。

― 最後に ―
この1月1日に長きに亘り東京教区、管区、エキュメニカルな分野でも献身された山野繁子司祭様が逝去されました。尊い働きへの感謝とともに、魂の安息をお祈りいたします。また、1月6日には荻原充新司祭が誕生しました。公会の司祭としての更なる働きを祈ります。先週には福永澄聖職候補生が教区の執事試験に合格され、今後執事按手に向けての準備に入りますので、お祈りの内にお覚えいただきたいと願います。
教区の教会・礼拝堂、関連諸施設の上に更なる神様の祝福を祈りますとともに、人事異動により新任地に赴かれる教役者と迎え入れる教会・礼拝堂、諸施設の上に聖霊の導きをお祈り申し上げます。ご清聴ありがとうございました。