東京教区 第145(定期)教区会 開会演説
2024年11月16日(土)
主教 フランシスコ・ザビエル 髙橋 宏幸
― はじめに ―
秋の教区会は北関東教区と交互に開催されます為、「東京教区第145(定期)教区会」は本日11月16日土曜日の開催となりました。ご参集いただいた議員および関係者の皆さま、教区会書記局、教区事務所、また会場準備をしてくださった方がたにこの場を借りて感謝と御礼を申し上げます。
私たちは、キリストに倣い、従い、仕える使命に与っているキリストの弟子として召されていることを心に留め、神の民としての働きを整えるべく、本教区会を「神の民の会議」に相応しいものとしたいと思います。皆さまのご協力を切にお願いいたします。
― これまでとこれから―
私たち東京教区は、教区成立101年目の時を歩み出しました。これまでも述べてきましたが、キリストの弟子としての使命に基づいて、また礼拝と宣教と奉仕の働きを通して、神の国のよき知らせを宣言し、新しい信徒を教え、洗礼を授け、養うことが各教会・礼拝堂、また信徒・教役者一人ひとりに求められています。そして愛の奉仕によって人々の必要に応答する働きとして、教区内教会、礼拝堂、施設で、「こども食堂」「フードパントリー」「給食活動」「野宿者支援」等、なされ続けている尊い働きに祝福を祈り続けます。また、諸施設での働きに従事、献身されていることへの感謝とともに、「幼稚園」「保育園」「学校」「社会福祉施設」とのつながりも欠かせません。
この4月には「放課後等デイサービス」が教会外の方がたの協力も得て、東京諸聖徒教会の中で始められました。また、聖オルバン教会「DSG( The Deeper Service Group)」の協力をいただき、目白聖公会では二度にわたる難民の方がたの一時受入れを引き受けてくださいました。これらもまた、いのちに仕え、隣人となるべく「行って、あなたも同じようにしなさい」というイエス様が命じられたことへの応答、実践であり、その働きに感謝し祝福を祈り続けます。
~ いのちに仕え、となりびととなるために ~「神のみ声に耳を傾けよう」「人びとの声に耳を傾けよう」「世界の声に耳を傾けよう」(「2023年日本聖公会宣教協議会」)、また全聖公会の「宣教の5指標」にありますように、社会の不正な構造を改革し、あらゆる暴力に反対し、平和と和解を追求すること、被造物の本来の姿を守り、地球上の生命を維持・再生するため努力することを、今この時代、この場にある教会、礼拝堂等で共有し続け、私たちに託されている使命、課題として大切に取り組み続けます。
また、子ども、青少年、弱い立場のおとなの安全を守り、高めるための「セーフチャーチ・ガイドライン」を基に日曜学校など子どもに関わる方がたによる研修会も実施されました。併せてキリストの体の肢である教会は、様々な国籍、文化的背景を持つ方がた、多様なジェンダーの方がたで構成されていることを覚え、より開かれ、各年代の人たちがそれぞれの賜物を生かし合えるキリストの教会を目指し、その存在が脅かされることなく、安全にその人らしく居られる場になるよう祈り、上の学び等を継続してまいります。さらに2024年4月に施行されました「改正障害者差別解消法」にある「合理的配慮」に関連して、早急に学びの会を開催することを計画していますので、宣教主事にお願いし追って具体的なお知らせをしていただく予定です。
教区の各委員会のお働きに感謝いたしますと共に、委員会の職務内容等の識別についての検討から、新体制、新教区を見据えた新たな展開を始めています。同時に、教会グループ協議会の働きとして、宣教協働や共通の課題や働きを巡っての話合い、必要なプログラム立案等をお願い致します。
現在、「東京教区成立100周年記念誌」発行作業に従事していただいていますが、これまでを振り返るだけでなく、今、そしてこれからを描くことを重視し、その作業が行われています。また、その中、コロナ禍での各教会・礼拝堂での当時の対応(連絡や集会やその他配信などについての工夫や作業)にも注視し、危機的状況の中での教会の在り方、宣教等にも触れてくださっていることは、重要な宣教的視点にも通じます。
「共育プロジェクト」主催黙想会、プロジェクトメンバーの定期的リトリート等のプログラムが行われていますが、霊性の大切さと求めが明らかに見え始めています。沈黙の中で神様との対話を大事にしつつ、更なる霊的成長を東京教区の大事な課題としてプログラムを続けてまいります。また、現在、その他のプログラムも計画し、実施に向かっていますとともに、「ナザレの家」の今後について、主体的に考えていきます。
霊性は私たちの働きと活動の源であり、神様の声を聴くこと、他者に、出来事に自らの心に聴くことに始まります。加えて、エキュメニカルな視点、協働も企画、検討課題とし始めています。これらすべての共育の礎となるものは主のみ言葉とみ業であり、聖書の学びに他なりません。
聖職志願者については、神様のお召の声をより良く聴き分けるための識別、霊的同伴プログラムが聖職養成委員会で始まっていますが、複数の聖職志願者が出てきたことは大きな感謝です。また、教役者の働き方、健康面への配慮について、担当医を定め、同時に教役者待遇調査委員会への諮問、答申を基に休職規定を改定いたしました。
― 子どもや青少年に関して ―
S Sネットワークでは、コロナの影響で休止していた「夏のキャンプ」が再開し、更に今後、北関東教区の日曜学校との繋がりを目指しての新ステージに向かう予定です。また、「中高生世代夏のキャンプ」「青年たちによる小笠原の旅」が行われています。小笠原聖ジョージ教会の信徒の方々との交わり、祈りから、信仰と生活委員会の中に小笠原プロジェクトを来年より発足させ、小笠原聖ジョージ教会の方がたと共に、小笠原にある唯一の教会としての宣教の働きを共に考えていきたいと願います。殊に、青少年の主体的な働きを支えるために安心して活動できる場所が、浅草聖ヨハネ教会のご理解、ご協力をいただき確保され大きな感謝です。これらを見守り、信仰者としての社会性を示し、同伴する大人の存在も欠かせません。来年、マレーシア聖公会サバ教区でCCEA(COUNCIL OF CHURCH OF EAST ASIA)青年大会の開催が予定されています。東京教区からの参加者も募りたいと思います。
― 平和といのち―
依然として地球上で不要な争いにより、流されてはならない血が流されています。世界各地の戦争、紛争を耳目にする中、「平和を作り出す」ことへの応答を真摯に祈り、殊に呼びかけに応えるべく祈り続けてまいります。武力や抑圧によっていのちが否定され傷つけられている地域や国々の人々が速やかに解放され、癒され、回復されますように、深く祈り続けますとともに、キリストの教会はいのちを傷つけ、尊厳を踏み躙ることに対して反対の立場を取り続けます。
また、日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞受賞のニュースがありました。「核といのちは共存できない」一方で、世界では核兵器使用の脅威が増している中にあって、私たちは「いのちを守るのか、壊すのか?」ということを真剣に問い、学び続けます。
11月9日(土)、「環境保全・命を祝う礼拝」を捧げ、「モンゴル 聖公会の森づくり」への祈りと献金を献げました。これは、先のCCEA、また日韓合同主教会でも重要な話題となりました。既に大韓聖公会では働きがなされていますが、両聖公会が向き合うだけではなく、協働すなわち共に同じ方を向きつつなしていく宣教の働き、いのちへの奉仕を実践していく上での一つの実りであり感謝です。
― 「変革」に向かって ―
新教区設立に向けての宣教協働が進む一方で、「第143(定期)教区会」で「教区費分担金制度等検討特別委員会」を発足し、調査、検証、協議を重ねていただき深く感謝いたします。この度、報告と提言をいただきましたポイントは、
1 現行の教区費分担金制度は、「財政規模の小さい教会の牧師給未支給/遅支給の是正」「教役者の経済不安からの解放」「牧師給支給が困難な教会に対しても人事が可能」という目的のため工夫された出発点がある。しかし今や、「教役者の給与支給は教区の責任であって、教会が全ての必要経費を捻出しなければならない訳ではない」というような意識の定着が、教会の宣教姿勢についても問題を生んでいると思える。本来は「教会こそが宣教の担い手」であるが、その意識が希薄になり、教会の使命について突き詰めなくともという危機感のなさを生んでいる可能性がある。
2 現行の「教区費分担金制度」を続け、これまでのように不足分を「伝道牧会資金」取り崩しで補填し続けると2028年には「伝道牧会資金」が底をつく可能性が大きい。
それは、二教会一牧師、三教会一牧師体制に組み直しても解決することではなく、あるいは管理牧師の教会との関わりを二分の一、三分の一にすることも、各個教会の宣教の方向性を明確にしない限り困難である。
3 新たな分担金制度を模索するに当たり、「教会はすでにサバイバル段階にある」という認識を共有することが必要不可欠であり、東京教区は以下に掲げるタスクを見据えた新たな体制(教区費分担金制度はその一部)を創出する必要性を感じる。
1) 経済的に自給している教会のさらなる成長のサポートの方法
2) 自給自立を目指す教会のサポートの方法
3) 自給自立に至れない教会の進路決定のサポートの方法
4) 教役者の継続教育と人件費を支える財政基盤の根本的な整備
そのためには、まず各教会が「現在点」を指し示すデータに向き合い、財政健全化と持続可能な宣教体制実現への具体的計画となる「教会変革へのロードマップ」を策定・実行し新たな分担金制度への移行に備えることを提案する。
「教会変革ロードマップ」を考える際のヒント
・宣教の在り方を決めるのは各教会であり、宣教の担い手は信徒である
・「活動」「プロジェクト」を中心に据えた宣教目標を各教会が明確化する
・人を生み、人を育てることが、すべての宣教の始まりであると認識する
・牧師は神学的洞察に裏打ちされたヴィジョンを示し、そのヴィジョンに従って宣教共同体と して教会を養い、成長させる責任を負う
これは、はじめに述べさせていただきましたように、教区の宣教の働きの拠点は先ず各教会・礼拝堂にあるということを再確認しようという提案であるとも言えます。教区の働きはその拠点の働きに協力し、また教会・礼拝堂間の協力を助ける働きです。
そして教会・礼拝堂とその会衆に信仰的な決断を求める内容となっています。改めてキリストの弟子としての使命に基づいて、祈りと学びをともにしながら、それぞれのあり方を検証しつつ、新たな宣教目標の共有とそれに基づいた決断を求めてゆきます。
― 北関東教区との宣教協働・新教区設立 ―
第一段階は「一つになったら」をキーワードに、第二段階は「具体的に一つになるために」、そしてこの春からは実務面でのスピードアップをお願いし、加えて北関東教区との合同教役者会、東京教区内での教役会の実施を重ねてきています。後ほど、鈴木伸明司祭様から詳しくお話しいただくことになっています。
「出会うこと 知り合うこと 祈り合うこと ともに働くこと」を柱に、降臨節・大斎節のみ言葉と歩む黙想集作成、両教区教会を交互に訪問し教会の建つ地域や成り立ちを学び、知り合う巡礼企画、青少年に係わる協働、礼拝音楽委員会の協働、北関東教区「信徒一致の日合同礼拝」への参加、青少年による大根の種まきと収穫 を両教区内の食糧支援現場に届ける等、様々な活動が継続されています。
来年秋の教区会にて「新教区設立について」の議案が出される予定です。またその準備を進めるための議案が今教区会に提案されています。
― 最後に ―
去る4月8日には植田仁太郎主教様が、10月8日には岩前宏司祭様が逝去されました。長きに亘り東京教区内教会、機関、施設、管区、エキュメニカルな分野でも献身されました尊い働きへの感謝とともに、魂の安息をお祈りいたします。
6月29日には福永澄聖職候補生が執事に按手され、北関東教区の大山洋平司祭との合同聖職按手式が捧げられましたことを感謝しますとともに、公会の執事としての更なる働きを祈ります。また明日、藤田誠執事の教区の司祭試験(説教)が、後日、岡フランセスさんの執事試験(説教)が行われますので、ぜひともお祈りください。
ご清聴ありがとうございました。
【聖公会の宣教の5指標】
神の国のよき知らせを宣言すること
新しい信徒を教え、洗礼を授け、養うこと
愛の奉仕によって人々の必要に応答すること
社会の不正な構造を改革し、あらゆる暴力に反対し、平和と和解を追求すること
被造物の本来の姿を守り、地球上の生命を維持・再生するため努力すること