味方にがんばってほしい

主教 植田仁太郎

 ある社会学者の分析によると、今日の日本の社会では、「宗教」や「信仰」は、何かしら危ないもの、あまりかかわり合わない方が良いものと、一般的に見られているそうです。例のオウム真理教による恐ろしい事件や、怪し気なカルト宗教への勧誘活動が、しばしばニュースになるからでしょうか。
  けれども、私たちは、私たち自身がそう努めているように、信仰をとおして、人間と世界と、そして生と死とにまじめに向き合おうとしている仲間が沢山居るし、そういう宗教も沢山あることも知っています。
  最近出版された岩波新書「寺よ、変われ」の主張には、キリスト者である私も、拍手したい気持ちになります。あるお寺の住職が、すべてのお寺が、人間と社会のあらゆる「苦」と取り組めば、この社会は変わると訴えておられます。この本によれば、日本には8万を越える数のお寺があり、その数は、全国のコンビニ店の数の2倍だそうです。そして、20万人にも及ぶお坊さんが居られるそうです。
  ずっと、この社会の少数者としての歩みを運命付けられているような、キリスト者の眼には、うらやましいような巨大なネットワークです。私はかねがね、何千万人もの人々が初詣に出かける、その神社、あるいはひとつのお寺でも、みなさんの献げるおさい銭の1割を「ホームレスの人や難民の人々のために使います」と言ってくれたら、世の中と人々の意識を変える力になるのになァと思っています。
  今、異なった宗教間の対話や協力が色々なレベルで行われていて、共同して、世界や人間の諸問題に取り組もうとしているのは喜ばしいことです。
  イエス・キリストも弟子たちに教えられました。「あなたがたに逆らわない者は、あなたがたの味方なのである。」