アイスワイン

主教 アンデレ 大畑 喜道

 季節はもうカレンダーが薄くなりました。教会の暦では新しい年が始まろうとしています。あんなに暑かったのに朝晩は本当に冷たさを感じるようになりました。先日小平墓地の帰りにぶどう農家の前を運転していたら「今年の収穫は終わりました。また来年のお越しをお待ちしています。」という看板がありました。そこでちょっと気づいた話からはじめたいと思います。 日本ではちょうど鬼の平蔵、長谷川平蔵が活躍していたころです。喜多川歌麿なども30代であったと思いますが、1794年冬、ドイツのフランコニアは予想外の霜に見舞われたそうです。農家は放置されて凍ってしまった熟した葡萄を処分するに捨てれず、それでワインを造ったところ、甘みの強い、芳醇な香りのワインになった。これがアイスワインの始まりといわれています。完熟して果糖分の高くなった葡萄が寒さによって果汁が凍結し、その実を凍ったまま搾汁した為に、水分が氷として残って果糖分が凝縮され、非常に濃厚で強い味わいになったのである。その生産性の低さから希少性が高く、高級なデザートワインとされるそうです。こんな話をしだすと酒飲みのように思われてしまいそうですが、普段捨てられてしまうようなぶどうだったということ、寒さに耐え抜いたぶどうから馥郁とした甘い香りの高級なワインが作り出されるという不思議です。神様のなさることは本当に不思議です。忍耐して神の不思議な業がなされることを待ち続ける。このことの重要性を再認識しています。